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2007年度冬学期 東京大学教養学部 (前期過程)「宇宙科学 II」

担当教官 海老沢 研 (宇宙科学研究本部)

更新履歴:
2008年05月22日 ---授業評価をリンク
2008年03月20日 ---試験問題、解答、結果をアップ
2008年01月28日 ---最終講義ノートをアップ
2008年01月21日 --- 1月15日の講義ノートをアップ
2008年01月15日 --- 1月7日までの講義ノートの整理、今後の予定を変更
2008年01月06日 --- 今後の予定を変更
2007年12月08日 --- 12月21日の見学についての情報を記載
2007年12月06日 --- 12月03日の講義資料をアップ、12月17日以降の講義予定を変更
2007年12月03日 --- 11月19日、26日の講義資料をアップ、12月03日以降の講義予定を変更
2007年11月26日 --- 11月19日の講義内容を記述(講義資料のアップはまだ)、11月26日以降の講義予定を変更
2007年11月19日 --- 11月12日(第5回)の講義資料をアップ, 11月19日以降の講義予定を変更
2007年11月12日 --- 11月05日(第4回)の講義資料をアップ, 11月12日以降の講義予定を変更
2007年11月05日 --- 10月28日(第3回)の講義資料をアップ, 11月05日以降の講義予定を変更
2007年10月28日 --- 10月22日(第2回)の講義資料をアップ, 10月29日以降の講義予定を変更
2007年10月16日 --- 10月15日(第1回))の講義資料(パワーポイント)をアップ


試験と結果

2008年2 月4日、試験をしました。受験した皆様、お疲れさまでした。
答案は返却しますので、事務室に取りに行ってください。

試験問題(90分、150満点)解答用紙模範解答

受験者数=19人、150点満点での平均=95.9点、メジアン(中間値)=97点、最低=59点、最高118点

大学に報告した成績は、元の点を2/3倍して出席点10点を足しました。
その平均=73.9点、メジアン=74.7点、最低50点、最高89点
優 (100-80点)=6人 (32%)、良(79-65点) =11人 (58 %) 、可 (64-50点)=2人 (11 %)

問題が多かったかもしれませんが、 「問6. X線連星系」がほぼ全滅だったのには少々がっかり。 この問題のように、単純な仮定から大雑把な物理量の大きさ (たとえばエディントン限界で光っている 中性子星の表面温度) を見積る、というのは研究の現場では非常に大事なことです。しかし、大学や高校の 物理、数学の授業では、ほとんどやらないことですね。(私自身も、大学院に入ってから研究の現場で 学んできたような気がします。)来年度はそこらへんを重点的にやりたいと思います。

限られた観測から、仮定を立てて大雑把な物理量を推定することは、物理学者のフェルミが得意だったので、 「フェルミ推定」と呼ばれることもあるそうです。最近はビジネスの世界でもフェルミ推定の重要さが 認識されているようです。


講義題目

X線天文学を通じて学ぶ基礎的な物理と数学

授業の目標、概要

大学の1、2年生で学ぶ基礎的な物理学と数学が、最前線のX線天文学の研究の現場でどのように使われているか、具体的な例を通じて学習する。本講義が学生諸君が受講 している物理・数学の講義の復習または予習になり、実際的な問題に触れることによって物理と数学の理解が深まることを期待している。

中性子星やブラックホールなど、X線天文学の観測対象について学習するだけでなく、 人工衛星、衛星運用、データ処理など、研究を遂行するために我々研究者が日々直面している課題についても紹介する。

各回ごとにトピックを選び、その話題は一回の講義の中で、できるだけ完結するようにしたい。また、 観測や研究集会に参加した折などに、最先端のX線天文学研究の話題も紹介したい。


授業の方法

古典的ではあるが板書を用い、学生諸君にはノートを取ってもらい、手を動かして理解することを目指したい。 板書の内容は講義後に、このホームページで公開する。

成績評価方法

学期末に試験を行う。どのような問題を出すかは、講義の中で不定期に公言する予定である。

授業でやったこと

講義ノートを、以下のフォーマットで公開します: latexのソース(*.tex)、 圧縮したポストスクリプトファイル(ps.gz), PDFファイル(*pdf), ブラウザで閲覧できる htmlフォーマット。

latex、htmlは、常に更新しているので、全講義を通じたノートを見られるようにしておきます。ps.gz, pdfに 関しては、各回ごとにやった内容を明確にするため、各回の分を作って置いておくことにします。

専門分野に依ってはlatexは必須なので、ソースコードがlatexを 学ぶ際の 参考になるかもしれません。latex中で、PASJから借りてきた スタイルファイルを使っています。 psを表示/印刷するには自分の環境にフォントを持っていないといけませんが、pdfよりもきれいです。 私は主にlinux環境で作業していて、pdfはpsからps2pdfを使って作っています。 latexからhtmlへの変更は、latex2htmlを使用しています。数式の背景が灰色になってしまって 困っていたのですが、このページを参考にして解決しました。あと、図をlatex2html中で回転させたり、 latexとlatex2htmlのコマンドを使い分けたりするのも、結構 面倒だったりします。\usepackage{html}、\usepackage{url}、 \latexhtml、\htmlimageなどを使っています。 詳細はソースを参照してください。


全講義を通した講義ノート(最終更新日 2008年01月28日):
html, latex, pdf, ps.gz


第1回(2007/10/15) --- 講義ガイダンス、講師紹介、X線天文学の歴史

以下のppt(Powerpoint file)を見るには、Powerpointまたは同等のソフトが必要です
pptpdf授業で見せた「すざく」 衛星の打ち上げムービー(Quick Time)


第2回(2007/10/22) --- 天球座標、座標変換、直交変換

講義ノート( pdf, ps.gz)
latexファイルで使っている最初の図のepsファイル
二番目の図は、ハンドアウトの(1)と同じです。

ハンドアウト:
(1)赤道座標、銀河座標、黄道座標間の変換図( ps.gz, pdf)
(2)Euler.nb( ps.gz, pdf, mathematicaのノートブック形式 )
(3)Galactic.nb( ps.gz, pdf, mathematicaのノートブック形式 )
このうち、(2),(3)は、mathematicaによる行列計算の例です。講義中で説明する時間がなかったので、 次回使う予定です。

上記の赤道座標、銀河座標、黄道座標間の変換図を描いた Fortranプログラム
pgplot という標準的なグラフィックパッケージを使っています。講義の内容を理解して、こういうプログラムを 自分で書けるようになれば、合格!、ということで。


第3回(2007/10/29) ---オイラーの定理、オイラー角と変換行列、赤道変換と黄道座標の間の変換、人工衛星の姿勢

講義ノート: pdf, ps.gz
ハンドアウト:
(1) 赤道座標から銀河座標の変換(3つのオイラー回転の順に) ps.gz, pdf
(2) 衛星の第3オイラー角と観測装置のロール角の関係 pdf


第4回(2007/11/05) --- 赤道変換と銀河座標の変換。観測天体、太陽の位置と人工衛星の姿勢の関係

講義ノート: pdf, ps.gz

"ASCA Slew Survey", MAXI Workshop on AGN Variability, RIKEN, 2001, p.49, ps.gz, pdf
あすか衛星のように、観測方向が太陽パネルと直交している 衛星のSlew(姿勢変更)パスが、黄道面に垂直であることのデモ(すざく衛星、あかり衛星も同じ)。図1を見てください。


第5回(2007/11/12) --- オイラー角と衛星塔載観測装置の視野、四元数

講義ノート: pdf, ps.gz

衛星の第3オイラー角と観測装置のロール角の関係を説明するアニメーション (ppt, pdf)
一応、pdfも置いておきますが、PowerPointのアニメを見ないと意味がわからないかもしれせん。 第3回のハンドアウト(2)を手元に置いて、このアニメーションと比べて見てください。


第6回(2007/11/19) --- 四元数を座標変換、人工衛星の姿勢へ応用する

講義ノート: pdf, ps.gz

講義で見せた、オイラー回転を説明するアニメーションを後に掲載する予定。


第7回(2007/11/26) --- 特殊相対性理論、四次元時空の直交変換としてのローレンツ変換

講義ノート: pdf, ps.gz


第8回(2007/12/03) ---相対論的な速度の変換則、四元運動量、ドップラー効果と光行差

講義ノート: pdf, ps.gz


2007/12/10--- 国際学会のため休講。あしからず。

第9回(2007/12/17) --- 一般相対性理論、Global Positioning System, 一般相対論効果のX線観測

講義ノート: pdf, ps.gz


12月21日(金) 14:00--16:00 宇宙科学研究本部見学会
講義に出ていない方もどうぞ。常に一般公開している展示室 の他、普段は見れない「すざく」衛星運用室、「かぐや」運用見学、クリーンルーム見学、 他に検出装置開発実験室、システム開発室見学、スパコン見学、あとできれば大学院生との懇談などを考えています。生協で宇宙研グッズを買って帰ろう!
おおまかな参加者数を把握しておきたいので、参加希望者は、ebisawaATisas.jaxa.jp(ATを@マークに変える)にメールください。
第10回(2008/01/07) --- 二体問題、人工衛星の軌道、惑星の軌道、ケプラーの第三法則

講義ノート: pdf, ps.gz
ハンドアウト:
(1) 焦点を共有する楕円 (e<1)、放物線 (e=0)、双曲線 (e>1)。 ps.gz, pdf
(2) X線パルサーと連星系のサイズの模式図。同じスケールで書いてある。 左下のメモりが100光秒=3000万km(地球と太陽との距離は500光秒)。 Joss and Rappaport, 1984, Annual Review of Astronomy and Astrophysics, 22, 537, figure 8より gif, ps.gz, pdf


第11回(2008/01/15)--- 軌道六要素、Two Line Elements

講義ノート: pdf, ps.gz


第12回(2008/01/21)--- X線連星系とその観測、黒体輻射、エディントン限界光度

第13回(2008/01/28)--- 黒体輻射の例、ステファンボルツマンの法則、中性子星の温度、降着円盤の温度、今までの 講義の復習

試験 (2008/02/04) --- 5限、16:50〜18:20、105教室。 電卓のみ(ポケコン、プログラミング電卓を含む)持ち込み可。ネット接続禁止


今年度やろうと思っていてできなかったこと

1.数値計算の手法。中性子星の内部構造の微分方程式を解く、降着円盤のX線スペクトルを数値積分で求める、など。
2.統計の話。正規分布、ポアソン分布、カイ二乗検定など、統計の教科書に書いてあることが、X線天文学の 研究にどう使われているか。スペクトルフィッティング、モデルの検証など。それと関連して、時間変動の話。ブラックホール天体の時間変動、パワースペクトルでブラックホールの声を聴く、など。
3.宇宙論、ダークエネルギー、など。自分の勉強も兼ねて。

たくさんあるなあ。。。来年度の課題でしょうかね。



参考書

  1. 「ブラックホールと高エネルギー現象」
    シリーズ現代の天文学 8,日本評論社, ISBN-13: 978-4535607286
  2. 「X線天文で学ぶ物理の世界」 (CD-ROM),丸善,
    製作・著作
    文部科学省大学共同利用機関 メディア教育開発センター https://www.nime.ac.jp
    問い合わせ先
    財団法人 放送大学教育振興会 https://www.ua-book.or.jp
  3. "Classical Mechanics", Goldstein, second edition, ISBN 0-201-02969-3
    座標変換、オイラー角、四元数に関する議論。日本語訳も出ていますが、版は古いかもしれない。
  4. 「人工衛星の力学と制御ハンドブック--基礎理論から応用技術まで」, 培風館, ISBN-10 4563067563
    タイトルどおりの、高価な専門書です。人工衛星の姿勢、四元数についての詳しい記述があります。 第5回、第6回あたりの講義でやったことを理解していれば、大学一年生でも、このような専門書を読めるはずです。
  5. "Classical Electrodynamics", Jackson, 第1版。
    アメリカで標準的に使われている、大学院レベルの電磁気学の教科書。第1版は日本語訳も出ています。 特殊相対性理論の議論を参考にしました。それに関しては、第2版よりも第1版のほうが、(厳密さには 欠けるが)簡単でわかりやすいと思いました。
  6. "Exploring Black Holes", Taylor and Wheeler, ISBN 0-201-38423-X
    相対性理論のわかりやすい教科書。GPSについては、これを参考にしました。
  7. 基礎物理コース 力学、喜多秀次他著、学術図書出版社, ISBN 4-87361-042-7
    私の京都大学1年生(1980年度!)の時の教科書です。隅から隅まで 読んで、演習問題も全部解きました。ごく普通の力学の教科書ですが、名著だと思います。一生手放せませんねえ。 幸い、まだ出版されているようです。