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小惑星探査機 はやぶさ

小天体からのサンプル採取

小惑星に関する十分な情報が得られ、着陸場所の選定が終わると、いよいよ探査機は小惑星への降下を開始します。その降下のシナリオを紹介しましょう。

降下の手順

まず、探査機は航法用カメラとレーザ高度計を用いて、自分と小惑星の位置を確認しながら、降下を開始します。このとき、探査機は自らが判断して、推進エンジンを調節、降下をしますが、その状況は地上にも伝送されます。地球まで電波が届くのに10分以上かかるため、地球で「操縦」をすることはできませんが、探査機が危険な状態になりつつある場合には、降下中止指令を送ることはできます。しかし、地球でできることはそれくらい。実質的な判断はほとんど全て探査機自身が行う必要があるのです。

高度30mまで接近したところで、探査機は人工の灯台ターゲットマーカを小惑星に投下します。ターゲットマーカは、10cmくらいの大きさで、小惑星表面で明るく輝きます。これ以降、航法用カメラは、このターゲットマーカを見ながら、小惑星への接近を試みます。また、この高度からは、レーザ高度計に替わり近距離センサが使用されます。近距離センサは複数のビームを放射状に照射することによって、距離とともに小惑星の表面がどのくらい斜めなのか、という情報も与えてくれます。さらに、衝突防止センサも動作し、探査機が予期せず小惑星と接触しそうになった場合、それを検知します。

十分降下した後、最終的な接地を前にして、探査機は推進エンジンの使用を停止、自由落下に入ります。直前までエンジンを使いすぎると、小惑星表面を噴射ジェットで汚染してしまうための処置です。これ以降、サンプルの収集を終了するまで、エンジンは停止のままです。自由落下の後、サンプラー・ホーンが小惑星表面に接地したことが確認されると同時にサンプル収集活動を開始、少し遅れて探査機はエンジンを噴射、小惑星表面から離脱、そして、また高度10kmくらいのところでホバリングし、地上からの次の指令を待つのです。

サンプル採取の方法

ところで、どうやってサンプルを採取したらよいでしょう? 小惑星の表面はとても重力は小さいです。月の重力は地球の6分の1などと言われていますが、小惑星表面の重力は地球の10万分の1以下です。 探査機にドリルを積んで穴を開けようにも、アンカーでしっかり固定していないと、穴が空く前に探査機が上に飛んでいってしまいます。

それから、忘れていけないことがもうひとつ。 小惑星の表面がどうなっているのか、本当のところは誰も知りません。 知らないからこそ調べに行く価値があるというものです。

さあ、どうやったら、よいでしょう?これは、なかなか難しい質問です。 いくつもの実験を経て、私たちがたどり着いた結論は、「表面を打ち壊せ」です。 どういうものなのか、図を用いて説明しましょう。

サンプル収集の順番は、こうです。まず、重さが数グラムの金属球を秒速300m位の速度で打ち出します(図のA)。 金属球は、小惑星の表面を破砕し、その結果、かけらが飛び散ります(図のB)。 小惑星の重力はとても小さいため、飛び散った破片は、サンプラー・ホーンに 導かれ、探査機内の収集箱へとのぼっていくのです(図のC)。

無重力実験を含む数多くの実験を行った結果、私たちはこの方法がよいと確信を持つに至りました。

小惑星表面からのサンプル採取は、できるならば多数回異なった場所で行い、 より多様なデータを得る予定です。1回毎に探査機は、 小惑星に近づきサンプルを収集し、また上空へと戻ります。小惑星の表面との接触時間は1回あたり1秒程度となる予定で、 サンプル収集機構は、あらゆる種類の表面に対して対応できるような機構となっています。