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「ひてん」月へ──重力を友とする美しき乱舞

太陽系の探査においては、スウィングバイというテクニックがしばしば使われる。土星に行くためにまず木星のすぐそばを通り、その重力(と運動エネルギー)を利用して太陽中心軌道の速度ベクトルを大きく変えた「ボイジャー」の場合などがその好例である。日本の惑星探査にも、将来必ずその技術の必要な時代が来ることを見越して、スウィングバイおよびそれに関連した技術を修得するための工学実験衛星として、MUSES-Aが計画された。MUSESはMu Space Engineering Spacecraftの略で、「ミューゼス」と読む。Aは、このタイプの最初の衛星という意味である。

さてMUSES-Aは、1990年1月24日20時46分、M-3SIIロケット5号機によって地球周回の長楕円待機軌道に投入され、「ひてん」(飛天、HITEN:天女の意)と命名された。「ひてん」の初期軌道制御後の平均軌道は、近地点高度262km、遠地点高度28万6,000km、軌道傾斜角30.6度、軌道周期は6.7日であった。

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