No.200
1997.11

UDSC   ISASニュース 1997.11 No.200

- Home page
- No.200 目次
- 200号記念にあたって
- 10大ニュース
- 「あけぼの」
- 「ひてん」
- 「ようこう」
- GEOTAIL
- 「あすか」
- EXPRESS
- SFU
- 「はるか」
- 赤外線観測
- M-Vロケット
- 観測ロケット
- アンドーヤ
- ダイアナ計画
- 太陽発電衛星
- 有翼飛翔体
- 相模原キャンパス
- KSC
- NTC
- ATREXエンジン
- SBC
+ UDSC
- PLAIN
- CAST
- SURC
- 初めての第三者評価
- 国際協力
- 将来計画
- ISASニュース200号に寄せて
- 編集委員会
- 宇宙研の100ヵ月パート2

- BackNumber

臼田宇宙空間観測所



 宇宙システムは大きく3つの部分;打上げロケット,宇宙機,地上系(ロケット管制,宇宙機管制)から成り,宇宙ミッションが成果を生むには,これらの「均衡と整合がとれている」ことが必要である。当観測所は,深宇宙探査ミッションにおける宇宙機管制用の地上局たることを主務とする施設であり,直径64mのパラボラアンテナを中心に構成されている。

まず過去8年間の出来事から,幾つかを年代順に記す。

 [1]「ボイジャー2号」が海王星の向う側を通過した際(1989年8月),探査機からのS(2GHz)帯電波を受信して海王星大気構造を調べる日米共同電波科学実験に参画。実験は成功を収め,超遠距離通信における臼田局の実力を示した。

 [2]将来の探査機からの高速データ受信の観点から,X(8GHz)帯の受信機能が加えられた(1989)。

 [3]これは早速,翌1990年1月には,「ひてん」の追跡管制においてS帯と併用され,1993年4月の月面への意図した衝突の際を含め,「ひてん」のミッション遂行に貢献した。

 [4]一般に地上局の位置精度は,深宇宙機の軌道決定精度に大きく影響する。1990年7月には郵政省通信総合研究所の支援を得て,電波干渉計の手法による臼田局アンテナの精密な位置決定を実施し将来に備えた。

 [5]1992年7月には,開設当初から続いている「さきがけ」の運用に加え,GEOTAILの運用が始まった。

 [6]当観測所では,大型アンテナを電波望遠鏡として電波天文観測も行われて来たが,「はるか」とのVLBI観測に対応するため,1992年から1995年にかけてL(1.6GHz)/C(5GHz)/K(22GHz)帯の受信機設備の整備が行われた。

 [7]1995年には,「はるか」からの観測データ受信のために,直径10mのパラボラアンテナを始めとしたKu(14〜15GHz)帯の送受信設備も建設された。

 [8]1997年5月には,当観測所の64mアンテナと「はるか」搭載のアンテナ(実口径8m)を用いた電波干渉計実験において,干渉縞がL帯で検出され,世界で初めてスペースVLBI技術が実証された。

 現在,当観測所では新棟(宇宙空間光通信研究実験棟,延べ面積1422m2,2階建て)を建設中で,11月に竣工予定である。本新棟には水素メーザが2台追加設置され,時刻安定性の大幅な向上が期待される。

 当観測所は,臼田町の中心地から,山道で15km,標高差700mに位置するが,道路の舗装等臼田町のご支援を受け,大きな事故もなく現在に至っている。1994年10月には,設立10周年の節目として,臼田町の協力のもと一般公開を行った。相模原キャンパスとは異なり町から遠く離れているため来場者の数と山道での事故の心配をよそに,事故もなく,予想を遙かに越す1,400人と盛況であった。

 当観測所の悩みとしては,水の問題があげられる。地層の関係上,湧き水が少ないため,完全自給はできず,適時麓から車での給水を行って凌いでいる。このように当観測所の運用は地元臼田町の協力なくしては成り立たず,紙面を借りて感謝いたします。

 今後の深宇宙ミッションは,PLANET-Bを初めとして,LUNAR-A,MUSES-Cと目白押しであり,当観測所の役割がますます重要となって来ている。目下の主要課題としては,X帯受信系の性能改善,X帯送信系の新設,アンテナ補修塗装があげられる。300号記念号にはこれらの課題を克服した報告文が掲載されることを期待したい。

(二宮敬虔)


#
目次
#
PLAIN
#
Home page

ISASニュース No.200 (無断転載不可)