No.200
1997.11

「あすか」   ISASニュース 1997.11 No.200

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ASTRO-D/1993.2.20/M-3SII-7



 科学衛星「あすか」は,1993年2月20日に打ち上げられた,わが国4番目のX線天文衛星です。来る2月には,満5歳の誕生日を迎えることになりますが,これまでのところ大きな問題もなく順調に観測を続けています。現在,日米両国を中心とした世界の研究者からの観測申込みに基づく一般公募観測が行われており,これまで,6回の観測申込みを受け付けてきました。「あすか」の特徴は,比較的波長の短いX線に対しこれまでにない感度の撮像能力を持ち,あわせて,これまでにない精度の分光能力を持っていることです。そのような「あすか」への世界の研究者の関心は高く,いつも2〜3倍の競争率になっています。そして,観測提案の中から選ばれたものを中心に,これまで1,500近いX線源が観測され,数多くの成果があげられてきました。それらをもとに,すでに,レフェリー付きの学術専門誌に300近い論文が発表され,25人を越える博士が誕生しています。以下に,これまでの「あすか」の成果の一部を紹介します。

 ◇濃いガスに取り囲まれているため今まで観測にかかることのなかったごく初期の原始星からのX線を検出。原始星の研究に,まさに新しい光を提供した。

 ◇超新星残骸の周辺でたいへん効率よく粒子加速が起っているらしいことを示す証拠を発見。宇宙線の加速の現場をはじめてとらえたものと考えられている。

 ◇われわれの銀河中心の方向にひろがって見えているX線の中に,冷たい物質が強いX線に照射されたときに出る鉄の特性X線を発見。その特性X線の量を説明するには,われわれの銀河の中心は,今から数百年前,今よりずっと強いX線源だった可能性がある。

 ◇活動銀河のスペクトル中に,ブラックホールのごく近くで回転している物質から出ていると考えるとよく説明される特異な輝線構造を発見。これは,活動銀河の中心にブラックホールが存在している大きな証拠をもたらしたと言える。

 ◇銀河団を包む高温ガスの分布を詳細に観測し,高温ガスを拘束するのに必要な重力質量のほとんどは,光やX線での観測にかからない暗黒物質で,その分布にも,銀河団スケールと,より小さな銀河スケールの階層構造があることを明らかにした。

 ◇重力レンズ効果の見られるクェーサーの手前に,重力源としての,銀河がほとんど見えないのにX線で明るい(高温ガスはある)特異な銀河団を発見。比較的若い宇宙に銀河団がすでに存在していたことにもなり,宇宙の進化の研究に大きな影響を与えよう。

(井上 一)






「あすか」誕生をめぐる『食い物の怨み』

 打上げ・初期運用の1ヵ月半のKSC滞在は大変慌しく,また緊張の連続でもありました。しかし,旅館の方の心使いで海産物を中心とした食事は至極良いもので,一緒に飲む焼酎ともに,これを心と体の支えに忙しい日々を送っていました。姿勢制御系が無事立ち上がり相模原に帰ってきますと,相模原の運用担当の皆さんがゲッソリやつれて見えます。聞くと,まともに食事の時間も取れず,近くで買ってきた弁当しか食べていないとのこと。一方私は,恵まれた食事のお蔭か,ツヤツヤと太って見えたそうです。KSC滞在中の食生活のことを話すと,怨まれること怨まれること,未だに根に持たれているようです。私もその後相模原で弁当だけの貧しい生活に突入し,痩せる思いを致しました。体重が元に戻ったのは3年後でしたが。

(紀伊恒男)


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