No.200
1997.11

観測ロケット   ISASニュース 1997.11 No.200

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観測ロケット



 ここ10年間(1988〜97年度),各年度の観測ロケットの機数は横這いで,年4,5機に留まっており,この間の総機数は,MT-135型19機,S-310型8機,S-520型12機となっている。うちS-520型3機,S-310型2機はノルウェー・アンドーヤロケット実験場から打ち上げられている。その他,ダイアナ計画(1989〜90年度)で,Super-Loki6機,Viper9機(米国OSC社製小型気象ロケット)がKSCから打ち上げられている。

 現在の単段式MT-135型(搭載機器重量5kg,発射上下角80゜,最高到達高度約55km)は,成層圏のオゾン濃度,気温,風の観測を目的としており,1990年度から成層圏オゾン濃度の長期的変動を計測するため,毎年2機の割で打ち上げられている。

 単段式S-310型(搭載機器重量40kg,発射上下角80゜,最高到達高度約200km)は,主に中性大気の高度領域の観測に用いられてきた。近年は,熱圏下部から成層圏(高度130〜40km)にかけた領域での,オゾン,一酸化窒素,酸素分子,原子密度などの計測の他,TMAによる風の観測等が行われている。

 単段式S-520型(搭載機器重量150kg,発射上下角80゜,最高到達高度約300km)は2段式K-9M型の後継機として開発されたもので,S-310型と共に観測ロケットの標準機として使用されている。S-520型には標準タイプの他に,回収タイプが用意されている。回収作業はヘリコプターで行っている。S-520型は本来の科学観測(銀河紫外線,近・遠赤外宇宙背景放射)に加え,衛星搭載前の予備試験,工学的機能の飛翔試験に用いられている。S-520-10,11,15号機による近赤外,遠赤外領域の宇宙背景放射の観測で顕著な成果が得られている。

 北極域における実験(ノルウェー・アンドーヤ)は4次(1990〜1994年)にわたり実験班が派遣され,現地の協力を得て,S-520-12,14,21号機およびS-310-22,23号機が打ち上げられ,オーロラなどの電離圏,磁気圏現象の解明に大きな成果が得られた。

 現在,高々度における観測を目的として高性能2段式ロケットSS-520型の開発が進められている。これはS-520型モータを第1段とし,発射上下角80゜,搭載機器重量75kgに対して,最高到達高度は約900kmである。初号機の打上げは98年早々に予定され,明後年にはアンドーヤからの打上げも計画されている。また,この派生型として小型衛星打上げ能力(約15kg)を有する3段式ロケットも検討中。

(雛田元紀)






「この部品は何だ?」

 「…3,2,1,0」発射!何度経験しても緊張と興奮を覚えずにはいられないロケット打上げ。宇宙研では今までに500機余りのロケットを打ち上げてきた。その内私自身100機の打上げに携わってきたことになる。バイパーからM-Vまで大小様々なロケットを見てきた。S-310観測ロケットは15号機より所内のメンバーによる打上げを試みることになり現在に至っている。その内1機だけ事情により私は参加しなかったロケットがある。実験後,相模原で返送器材の工具箱を整理していたところノーズコーンの開頭機構に使用する小さな部品が出てきたのである。びっくりして出張メンバーに聞くと間違いなく組付けたとのこと。もちろんこの部品なしにノーズコーンを組付けることは不可能である。製造メーカに問い合わせるとその部品の予備品は作っていないとのこと。飛翔・観測ともにうまくいったし,「まあいいか」とは言わないまでも,そのまま部品は私の机の中に眠ったままである。

(吉田裕二)


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