No.200
1997.11

GEOTAIL   ISASニュース 1997.11 No.200

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GEOTAIL/1992.7.24/Delta II



 GEOTAILは1992年7月に米国のフロリダからデルタIIロケットで打ち上げられた日米共同プロジェクトの衛星で,現在も順調に観測を続けている。主目的は地球磁気圏尾部の探査で,和名では「磁尾艇留」と書く。観測した領域は軌道の特徴によって二つに大別される。前半の94年11月までの2年余りの期間では,月のスウィングバイ技術を利用した軌道制御によって遠地点が常に地球の夜側(磁気圏尾部)に保たれ,210Re ( Re = 地球半径;210Re = 134万km )までの磁気圏遠尾部の広範な探査が行われた。これほど広範な遠尾部の領域を総括的に観測したのはGEOTAILが初めてであり,多くの新しい知見がもたらされた。

 その後,軌道は大きく変更され,現在は近地点6万km,遠地点19万kmの楕円軌道で比較的地球に近い領域の磁気圏プラズマの観測を行っている。この軌道では,磁気圏尾部だけでなく,昼間側の磁気圏境界面や更に太陽側にある衝撃波の観測データも豊富に得られている。

 GEOTAILの観測データは,その質・量ともに,従来の磁気圏観測衛星に比べて飛躍的に向上したため,磁気圏物理学の進展に大きく貢献してきた。ちなみに,国際会議での口頭発表件数は約750,学術専門誌に発表された論文数は170程である。昨年11月には,この衛星の成果を中心とする「地球磁気圏尾部研究の新たな展望」の国際会議が金沢市で開かれた。GEOTAILの数多くの観測成果のなかで,磁気リコネクション過程の研究は特にめざましいものがある。磁気リコネクションは地球磁気圏だけでなく,もっと一般的に,太陽コロナ,天体プラズマ,核融合プラズマでも重要な素過程の一つと考えられている。GEOTAILは,その現場あるいは近辺を調べることのできる唯一のプローブである。実際,その観測結果は磁気リコネクション過程によるプラズマの加熱・加速過程やプラズマ混合過程の研究に飛躍的な進展をもたらしつつある。

 一方,IACGなどの協議のもとにロシアのインターボール衛星や米国のWIND,POLARの両衛星との共同観測キャンペーンを実施してきた。また,最近では,太陽フレアに伴って惑星間空間に放出された多量のプラズマ雲が地球に磁気嵐を起こしている現象について現在活躍中のできるだけ多くの衛星観測や地上観測データ,計算機シミュレーションを駆使して研究しようという大規模な国際共同研究が特に米国を中心に展開されており,その中でGEOTAILの観測データはキーとなっている。

(向井利典)






衛星の計画停電

 ISASの衛星の中で全ての電源を計画的に停電させたのはGEOTAILが唯一と思う。但しミッションを全うして,ただ無意味に貴重な電波資源を浪費するのを防ぐため,丁重に最後の引導を渡した衛星は別である。GEOTAILの目的達成に重要な観測機器の一つLEP(低エネルギー粒子計測装置)がラッチアップ現象を起こし,衛星全体の電源を一時切る以外に回復の道がなかったために実施した決断であった。この停電を行うに当たっては様々な解析や実験が行われ,安全に実施可能か否かを入念に検討した。関係者一同祈るような気持ちで決行したこのオペレーションにより,一部にその後の運用上の不都合を残したものの,仮死状態のLEPは無事生き返り,その恩を忘れることなく貴重な観測データを送り続けている。

(橋本正之)


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