No.200
1997.11

SURC   ISASニュース 1997.11 No.200

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宇宙基地利用研究センター



 宇宙基地利用研究センターは宇宙環境利用に関する研究の発案およびその育成を積極的に行ってきた。特に宇宙における科学研究のうち新しい領域である生命科学や微小重力科学などについては,研究の体系化や予備実験を行って宇宙利用の学術的意義を明らかにするよう,共同研究や様々な支援も行っている。そして当センター自らも,落下塔での短秒時の自由落下や,電磁気力,超音波などによる模擬的・擬似的な微小重力環境の生成,また遠心機による過重力実験により,重力が種々の現象にどのような作用を及ぼすかを広く探索している。

 材料実験分野では,微小重力環境利用において限られたリソースと実験回数を有効に利用するという観点から,試料中の状態の可視化技術,いわゆるその場観察を方法論の1つとして発展させてきた。結晶や流体が観察光(紫外線〜近赤外線,X線等)に対し透過性を持てば,干渉縞計測等により結晶表面の起伏,流体内温度・濃度分布等のリアルタイム計測が可能になる。当センターは宇宙材料実験におけるその場観察装置として,SFU-MEX(微小重力下の凝固・結晶成長実験)搭載用に,顕微鏡レベルの空間分解能を持つ共通光路型2波長顕微干渉計を世界で初めて開発した。その結果,本干渉計は,打上げ時と宇宙空間での様々な環境条件でもその光学的特性が損われないという従来では過酷とされた条件を満たした仕様となった。SFUとは結果的に実施スケジュールが前後してしまったものの,TR-1A小型ロケット実験に搭載されたその場観察装置は本干渉計をベースにしたものであり,また同等品は地下無重力実験センターの落下実験でも用いられた。

 生命科学分野では,これまでに3回の宇宙生物学実験を行っている。1回目は1990年,旧ソ連の宇宙ステーション・ミールによる実験で,ニホンアマガエル成体の微小重力下での行動の観察を行った。この実験で,微小重力下での特異的な姿勢・運動の制御についての微小重力環境への適応が見られたこと,脊椎骨の脱灰等様々な結果が得られた。現在,この実験から発展させた研究として,生育場所の異なる多種のカエルを用い,地球上での生活の違いが,重力感受の機構の差異に反映するものであるかを調べるために,国際宇宙ステーション・アルファでの実験テーマの候補の一つとして計画が進められている。

 2・3回目の宇宙実験は,いずれもアカハライモリの産卵・受精・その後の初期発生のプロセスに及ぼす微小重力の影響を調べることを目指し,1994年のIML-2計画,1995年のSFU-BIOとして行われた。IML-2では,軌道上で,産卵とその後の発生の進行が観察された。SFUにおいても,受精卵の発生の進行が起こっており,この受精卵の中には,軌道上で産卵された確率の非常に高いものがあったことが示された。当センターでは,卵や胚の発生・形態形成における重力の役割をさらに詳細に調べるために,胚を構成する個々の細胞に対する重力の影響を探ることを目指し,そのモデル系としてウニ胚の骨片形成系を選び,宇宙実験への適合化も含めた細胞レベルでの研究を進めている。

(栗林一彦)


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