リュウグウのようなC型小惑星と彗星のようなX型小惑星の中間的な特徴を示す暗い小惑星の発見

長谷川 直・宇宙科学研究所 大学共同利用実験調整グループ

可視光の幾何アルベド(反射率の一種)が0.1未満の暗いメインベルト小惑星(火星軌道と木星軌道にいる小惑星)の一種であるC型(はやぶさ2がサンプルリターンした小惑星162173 Ryuguはこのスペクトルタイプ)は、可視光の波長域では平坦もしくは負のスペクトル勾配(図1参照)を示す一方で、暗いX型小惑星(一般的に彗星はこのスペクトルタイプと言われている)は、可視光の波長域では正のスペクトル勾配(図1参照)を示します。さらに、近赤外域の波長1.0~1.3 𝜇m付近に浅い吸収特徴が存在するかどうか(C型の場合は吸収あり、暗いX型の場合は吸収なし)によって区別されます。
本研究チームは偶然にも、小惑星1093 Fredaおよび1390 Abastumaniが、可視光から近赤外域にかけての正のスペクトル勾配を示す暗いX型小惑星の特徴を持ちつつ、近赤外域の波長に浅い吸収帯が存在するC型小惑星の特徴を併せ持つ、C型と暗いX型の2つの型の間の中間的なスペクトル特性を持つことを発見しました。
文献調査の結果、同様の分光学的性質を持つ小惑星をさらにいくつか見つけました。C型と暗いX型の間のスペクトルの連続帯に位置するこうした天体の存在は、C型と暗いX型の起源が共通であることを示唆しています。

研究概要

小惑星には、25143 Itokawa(はやぶさ探査機がサンプルリターンした小惑星)のようなS型と162173 Ryugu(はやぶさ2探査機がサンプルリターンした小惑星)のようなC型があることが知られています。このうちC型は可視光の幾何アルベドが0.1未満の暗い小惑星です。一方で、他に暗いX型という彗星と反射特性が似ている小惑星があります。これらの小惑星の反射特性として、C型は可視光の波長域では平坦もしくは負のスペクトル勾配を持ち、かつ、1.0~1.3 𝜇m付近に浅い吸収特徴が存在していることが特徴です。一方で、X型小惑星は可視光の波長域では正のスペクトル勾配を持ち、かつ、1.0~1.3 𝜇m付近に浅い吸収特徴が存在していないことが特徴です(図1)。

図1-1
図1-2
図1:小惑星1093 Fredaおよび1390 Abastumaniの反射率スペクトルと測光データ。赤色と青色の線は、それぞれ、Bus–DeMeo分類法(F. E. DeMeo et al. 2009)に基づくX型およびC型小惑星の平均スペクトル値に対応しています。

本研究チームは、太陽系初期のプラネテシマル(太陽系が形成された初期に作られた微小な天体)の生き残りと考えられている直径100km以上の小惑星の組成を詳しく調べるために、ハワイのマウナケアにある口径3.2mのNASA赤外線望遠鏡施設を用いて波長0.8-2.5µmの分光観測サーベイを行っています。その途中で、可視光域の特徴はX型であるが、近赤外域の特徴がC型という小惑星を偶然2つ(1093 Fredaおよび1390 Abastumani)発見しました(図1)。さらに文献調査を行うと、そのような特徴を持つ直径100km以上のX&C型小惑星が10個程度存在していることがわかりました。小惑星のX型とC型のスペクトル間に連続性が見られることは、これらの小惑星が(部分的に)分化しており、同じ始原的特性を共有していることを示唆しています。

さらに、X&C型小惑星の表面は、マグヘマイト(磁赤鉄鉱)や極細粒のマグネタイト(磁鉄鉱)よりもクロンステダイト(鉄珪酸塩鉱物)で構成されている可能性が高いことがわかりました。クロンステダイトはCIコンドライト親天体のマントル層で生成される可能性が高いことから、X&C型小惑星は、CIコンドライト隕石(最も始原的な隕石と考えられている隕石)の分化母天体のマントル層に相当する可能性があります(図2)。また、まだ地球上では見つかっていないCI2コンドライト隕石(水と無水岩石との化学反応である水質変性があまり進んでいないCIコンドライト隕石。これまで見つかっているCIコンドライト隕石はより水質変性が進んだCI1コンドライト隕石)に相当する可能性もあります。したがって、太陽系の最初のプラネテシマルが分化し始めた際、各層の組成が徐々に異なっていくことで、C型とX型の両方の組成が生まれた可能性があります。これらの母天体が衝突よって破砕された時、共通の母天体を持ちながらも組成の異なる天体ができたと考えられます。

図2
図2:X&C小惑星の部分的に分化が進んだ親天体について、本研究チームが提案する内部構造モデルを示した概要図。灰色部分がコア部分で水質変成が進んだ最も進んだエリア。赤色部分がマントル部分で水質変性があまり進んでいないエリア。黄色部分は水質変性がないエリア。

論文情報

雑誌名 Monthly Notices of the Royal Astronomical Society (letter)
論文タイトル Dark asteroids exhibiting intermediate characteristics between C and X types
DOI https://doi.org/10.1093/mnras/stag1095
発行日 2026年6月10日
著者 Sunao Hasegawa, Chrysa Avdellidou , Michaël Marsset, Ullas Bhat, Marco Delbo, Daisuke Kuroda , Moe Matsuoka , Masateru Ishiguro, Cristina A. Thomas, Francesca E. DeMeo and Pierre Vernazza
ISAS or
JAXA所属者
長谷川 直(宇宙科学研究所 大学共同利用実験調整グループ)

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執筆者

長谷川 直(HASEGAWA Sunao)
東京大学大学院理学系研究科博士課程修了
JAXA宇宙科学研究所 主幹研究開発員
大学共同利用・超高速衝突実験施設担当