No.200
1997.11

「ようこう」   ISASニュース 1997.11 No.200

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SOLAR-A/1991.8.30/M-3SII-6



 「ようこう」衛星は,これまで既に6年以上にわたり極めて順調に観測を続けてきた。この間,硬X線望遠鏡は1,000個以上の太陽フレアを観測し,軟X線望遠鏡は380万枚を超える「激しく活動する太陽の高温コロナ」の鮮明なX線画像を撮影し,さらにX線分光計はその詳細なスペクトルを記録している。

 「ようこう」は,太陽活動の極大期に打ち上げられた。現在,太陽は活動の極小期を経過して,2000年代初めの次の極大期に向かって再び活発に活動を再開し始めている。このように長期にわたって太陽活動の連続観測をした衛星はこれまでになく,その優れた観測能力とともに「ようこう」の今後の長期にわたる連続観測が大いに期待されている。「ようこう」のこれまでの研究成果は実に多岐にわたるが,なかでも特筆すべきことは,太陽の超高温プラズマが極めて激しくダイナミックな変動をしている様相をはじめて明らかにし,それを支配している太陽磁場との相互作用の解明を進めてきたことである。特に,長年の懸案であった太陽フレアの研究を大きく前進させ,磁場の再結合がフレアの発生に決定的な役割を担っていることを示したことは重要な成果の一つである。

 これらの観測結果は,広く世界の太陽物理学者に提供され,多くの研究が行われた。これまでに約400編の研究論文が発表され,年々の発表論文数もまた増加の一途をたどっている。日本以外の研究者による発表の方が多いのは,総数では外国の研究者の数が多いから当然であるとは言え,喜ばしいことである。

 「ようこう」は,我々が日頃よく見慣れている太陽を,全く新しいX線と言う目で見た画像を見せている。これは,学問的にも重要なことであるが,同時に,一般の人々に最先端の科学の成果を大変親しみやすい形で提供したという点でも意義あることである。このことはNASAの惑星探査機が地球の仲間である火星,土星,木星などの詳細な素顔を見せてくれたことに似ている。既に「ようこう」の画像は,ワシントンのスミソニアン航空宇宙博物館でもビデオで常設展示されているのを始め,世界各国の極めて多数の博物館・科学館,テレビ番組,科学映画,書籍,雑誌等で広く紹介され,科学教育と啓蒙活動のために利用されてきた。  毎日の観測結果は,インターネットその他の通信回線を通じて即時に世界中に配布され,各国の天文台や研究機関が共同観測のデータとして,また研究計画立案の貴重な資料として役立っている。

(小川原嘉明)






「ようこう」硬X線望遠鏡開発の「盲」と「蛇」

 硬X線望遠鏡の高圧電源に火を入れて64素子全ての正常動作が確認できたときの喜びは忘れられない。多素子すだれコリメータによる「フーリエ合成型」望遠鏡を提案したころは,これで撮像ができるということさえなかなか理解してもらえなかった。私自身は確信があったが,それはコリメータや検出器のハードの難しさに無知であったが故(「盲,蛇におじず」)である。設計が固まり製作が始まってからは冷や汗の連続だった。特に最終盤の振動試験でボロが出たときには全素子の完全動作は期待できないかもと弱気になった。全素子正常動作を示すテレメトリ・データを見つつ鹿児島から仲間に興奮して電話したのは,もう6年も前のことだ。幸い硬X線望遠鏡は今も正常に働いている。

(小杉健郎・国立天文台)


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