三陸大気球観測所
三陸大気球観測所において放球した気球の数は,今年,1997年の秋の実験が終わったところで,324機となった。ISASニュースの第100号が出た年,1989年は,放球数が250を越えた年であったので,それから,およそ年8機の割合で揚げてきたことになる。
この間三陸の施設に大きな変化はないが,一つ,旧受信点の建物が改修され,第二受信点としてより有効に活用できるようになった。実験設備に関しては,1995年,移動用の追跡受信装置の更新があった。
この8年間,三陸の大気球における大きな成果は,高高度用薄型気球の開発の成功である。厚さ6ミクロンのポリエチレンフィルムを用いて超軽量の気球を製作,気球は1993年に高度46.0km,95年に47.8km,今年97年1月には50.2kmまで上昇した。それぞれが,その時点での日本最高高度記録であった。専用の接着装置の開発,放球法の工夫,機器の軽量化等,着実な研究の積み上げの上になされたものである。オゾンや大気微量成分の観測に実用されており,1994年には北極圏スピッツベルゲンでも飛揚された。
三陸で行われた科学観測は多方面にわたるが,それらの中に,新たな成果を上げたものとして,シンチレーションファイバー検出器による一次電子の観測や赤外線望遠鏡による銀河面やオリオン領域の電離炭素放射観測などがある。成層圏大気のクライオサンプリングも1989年以降6回行われた。
三陸での実験ではないが,宇宙研の気球グループが協力した国立極地研の南極周回気球の成功も特記すべきものとしてここに加えたい。
(廣澤春任)