太陽発電衛星の研究は,宇宙工学委員会の下に1988年に設置された太陽発電衛星ワーキンググループの活動を軸に行われてきた。主査は,初代の後川教授,その後,三浦教授,長友教授に引き継がれている。 宇宙研に設置されるワーキンググループは,その名前を冠した衛星計画の実現のための検討を行い,提案が工学委員会や理学委員会で認められれば,計画を実施する研究班に移行するという枠組みで設置されるものである。ところが,太陽発電衛星そのものは人類の大規模な将来エネルギーシステムであり,宇宙科学研究の枠に収まらないものであったため,ワーキンググループの活動も特異なものとなった。
ワーキンググループでは,SFUの次期ミッションを想定したエネルギーミッション計画,国際宇宙年の観測ロケットによるマイクロ波伝送実験,後にSPS2000という名で国際的にも有名になった太陽発電衛星の設計研究,マイクロ波が生態系に及ぼす影響を研究するマイクロ波ガーデン計画,という4つのプロジェクト型研究を手がけた。この間,宇宙研の一般公開での太陽発電衛星技術のデモモデルの製作を通じ学生を教育するとともに,英国からコリンズ氏,ロシアからバンケ氏,フランスからピニョレ氏,インドネシアからプルワント氏を招いて国際的な共同研究も行った。
ワーキンググループのプロジェクトは一定の成果を挙げ,宇宙科学研究の枠を越え発展的に引き継がれることになったため,ワーキンググループは今年3月に,設立以来9年にわたる活動の幕を閉じた。ワーキンググループの中の学会的な活動は,この秋に発足する太陽発電衛星研究会に引き継がれることになっている。
(佐々木進)