ISASの情報発信!研究情報ポータルサイト「あいさすGATE」が公開から2周年を迎えます!
~宇宙科学研究所 研究情報委員会・ワーキンググループ座談会:兵頭龍樹氏、久保勇貴氏、井上喜美子氏、八木綾乃氏、斜木真里子氏、早川由貴子氏、土田里美氏~

あいさす GATE Webサイト

宇宙科学研究所(ISAS)が運営する研究情報ポータルサイト「あいさすGATE」(本ウェブサイト)は、2021年7月の公開からまもなく2周年を迎えます。
「あいさすGATE」では、宇宙科学研究に関心をお持ちの方に向け、研究者情報や最新の研究成果、研究者の活動や生の声など、様々な情報を発信しています。
本記事では「あいさすGATE」の企画・運営をしている宇宙科学研究所研究情報委員会・ワーキンググループや実際に作業を担当しているメンバーにて行った座談会の様子をご紹介します。今後も皆様に「あいさすGATE」をご活用いただくために、また宇宙科学を発展させていくために、どのような情報発信が必要なのか、それぞれの立場での想いや今後の展開について意見交換を行いました!

磯部直樹氏、吉光徹雄氏、森治氏、佐伯孝尚氏
左から、兵頭龍樹氏、久保勇貴氏、早川由貴子氏、八木綾乃氏、土田里美氏、斜木真里子氏、井上喜美子氏
左から、兵頭龍樹氏、久保勇貴氏、早川由貴子氏、八木綾乃氏、土田里美氏、斜木真里子氏、井上喜美子氏
兵頭 龍樹

兵頭 龍樹(宇宙科学研究所 太陽系科学研究系 国際トップヤングフェロー)
惑星形成論および惑星探査を専門とし、JAXA内部から積極的に次世代の惑星探査ミッションの構築を行う。ESA・NASA・JAXAの3機関の探査計画に参画している。また、これまでNASA、東京工業大学、パリ大学とISAS以外の研究機関・大学に在籍して研究を行ってきた経験を活かし、「あいさすGATE」の運営に研究情報ワーキンググループメンバーとして参加、ISASの研究情報の発信について企画・検討を行っている。

久保 勇貴

久保 勇貴(宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 宇宙航空プロジェクト研究員)
宇宙機の軌道・姿勢制御と宇宙ロボティクス、宇宙機システム工学を専門とし、様々な宇宙開発プロジェクトに携わる。「あいさすGATE」の運営では研究情報ワーキンググループのインタビューチーム長として、研究や研究者の魅力を発信する企画・検討を行う。また、相模原キャンパス特別公開での音楽配信活動や、個人として宇宙を身近に感じるエッセイを執筆、出版するなど、宇宙科学の魅力を発信する活動を積極的に行っている。

井上 喜美子

井上 喜美子(宇宙科学研究所 科学推進部)
研究情報委員会 事務局。宇宙科学研究所の研究者総覧「あいさすmap」および研究情報ポータル「あいさすGATE」の立ち上げに尽力し、現在も運営を担当している。宇宙科学研究所図書室担当。

八木 綾乃

八木 綾乃(宇宙科学研究所 科学推進部)
研究情報委員会 事務局。宇宙科学研究所の研究者総覧「あいさすmap」および研究情報ポータル「あいさすGATE」の立ち上げに尽力し、現在も運営を担当している。

斜木 真里子

斜木 真里子(宇宙科学研究所 科学推進部(インタビュー時))
「あいさすGATE」のコンテンツの情報収集、取りまとめを行う。

早川 由貴子

早川 由貴子(宇宙科学研究所 科学推進部)
「あいさすGATE」のサイト制作を担当。所内から提出された論文やインタビュー記事の掲載を行うなど、サイトのデザイン・構成を担当。

土田 里美

土田 里美(宇宙科学研究所 科学推進部)
「あいさすGATE」のコンテンツ「あいさすpeople」に掲載するインタビュー記事のインタビュアー、記事作成を担当している。

研究情報ポータル「あいさすGATE」の構想のはじまりは、研究者総覧「あいさすmap」から

あいさすGATEバナー
「あいさすGATE」の“GATE”は、扉とGATEWAYの意味があり、研究者が自らの言葉で研究や活動を発信し、サイトを訪れた方と宇宙科学コミュニティをつなぎ、宇宙科学を深く理解するきっかけになることを目指している。

久保: まずは立ち上げメンバーである八木さん井上さんから、改めて「あいさすGATE」の構想が始まったきっかけや立ち上げ当時の状況を聞かせてください!

八木: 構想としては、研究者総覧「あいさすmap」から始まりました。これまでISASではプロジェクトに関することなどは広報から発信していましたが、研究者個人の情報や成果を発信するプラットフォームがありませんでした。「ISASの研究者はとても面白い方が多いけど外部の方にはあまり見えていない。」と課題に感じていたことが起点となり、井上さんと私の業務の中で何か改善できないかと検討し始めたことがはじまりですね。

井上: まずは宇宙研には研究者総覧が必要!そう強く思っていました。長年考えていたことを、このメンバーと実現していきました。

あいさすmap Webサイト
宇宙科学研究所 研究者総覧「あいさすmap」
国立研究開発法人科学技術振興機構が運営するresearchmapを活用した研究者総覧を構築。研究者のデータベース(プロフィール、顔写真、経歴、表彰受賞、発表した論文リスト等)が掲載できる。

八木: まずは、研究者総覧を作るために他の研究機関や大学を訪ね歩きました。その後、所内で検討を重ね、「研究者の見える化」と「情報発信の強化」を目標に掲げ、2020年に研究者総覧「あいさすmap」をスタートしました。
研究者と研究成果が「見える化」しただけではなく、共同研究等に繋がる可能性もありますし、これまで時間を要してきた研究業績の取りまとめといった事務作業の効率化に繋がるなど、様々な効果があると感じています。
そして、目標に掲げた「研究者の見える化」と「情報発信の強化」を実現するために、「あいさすmap」と同時に、研究者が自らの言葉で研究成果を発信できる場として研究情報ポータル「あいさすGATE」を構築しました。

研究者が情報発信のマインドを持つ

久保: 僕自身も「あいさすmap」を活用して、研究成果や活動を登録しています。重要なことだと理解して更新していますが、日々の研究では、自身の研究だけでなく宇宙機の開発やプロジェクトにも関わっているので、その中で研究業績をあげて、さらに情報を発信していくことは責任も感じますね。

兵頭: JAXAは最高の研究機関であるべき存在なので、所属する我々研究者はプロジェクトへのコミットメントももちろん重要ですが、自分が専門とする研究でも成果をあげなくてはいけません。「あいさすmap」を通して各研究者の存在が外から見えるようになりました。「あいさすGATE」では、若手であっても良い研究成果(面白い研究活動)があれば、表に出ることが可能となり、JAXA内外の方との更なる共同研究に繋がりえます。“仲間作りに繋がる” ことが情報発信をする重要な意義価値になります。ISASがさらによい研究機関になっていくために、プラットフォームの構築や、体制検討など、今後も様々な取り組みをしていきたいですね。

八木: ある程度の成果を上げることができた「あいさすmap」ではありますが、外部の方に興味を持っていただいた後の次のステップについては、まだ課題が残っています。

斜木: そうですね。「あいさすmap」にはメールアドレス等の研究者に直接コンタクトをとる情報の掲載ができません。セキュリティの問題や問い合わせ情報の管理にはまだ課題があり、スムーズに進めないのが現状です。

八木: JAXAとしての外部からの問い合わせ窓口はもちろんあるので、サポート体制も作りながら、よりわかりやすい研究者へのコンタクト方法を整えていく必要がありますね。

兵頭: 研究機関として、共同研究などの機会が止まらないように改善が必要ですね!

内部から新たな研究を生むために、情報をシェアできる体制や環境を変えていきたい!

兵頭: 「あいさすGATE」から話は逸れますが、ISAS内部での情報の見える化も重要だと感じています。ISASは研究室単位での活動が多く、研究室同士の情報共有がしにくい環境です。ISAS内部から新たな研究を生むためにも、情報をシェアできる体制や環境を変えていきたいですね。

久保: 僕が学生の頃にも同じ問題意識を持っていて、学生同士の横の繋がりを作る「学生コミュニティ」を有志で作りました。隣の研究室にどんな研究者がいて、どんな研究をしているのかを知らずに自分の研究室の世界だけで卒業してしまうのはもったいない、という声があったことがきっかけです。理学・工学の研究者と学生が集まるISASの素晴らしい環境を活かして、コネクションを作るとか、新しいアイディアが生まれるようにしたいですね!海外や他の大学での研究をされている兵頭さんは、何かアイディアがありますか?

兵頭: 海外や他の大学でも研究促進を目的とした取り組みや、内部のコミュニケーションの活性化を目的とした取り組みがされていますが、ISASですぐにできることとして一部のメンバーで検討しているのは、「ドーナツ部屋」を作ることです。理学・工学など分野も研究内容も気にせず、誰もが使えるフリースペースです。ドーナツが置いてあるような、くつろげる場所を作り、その部屋が会話を生むきっかけとなり、分野の壁を越えた交流が生まれる場所にしたいと思っています。

久保: ISASでは交流の促進を目的とした「ISAS Coffee Chat*1」もありますが、人が集まるとどうしても講演会のような雰囲気になってしまうので、交流を生むアイディアがもっとあっても面白そうですね!

兵頭: ISASは所属する人数も多い組織なので、開催方法などは難しい点もありますが、ざっくばらんに交流ができる場を積極的に作っていき、内部からも共同研究が生まれるようにしたいですね。

*1ISAS Coffee Chat: 昼食後のひと時、コーヒー片手にISAS内の研究者・技術者・事務系職員が集い、宇宙科学をはじめとする様々な話題提供を基に気軽に意見交換を行うことで、研究促進やアイデア創出に寄与することを目的とした所内の交流会。

学生が研究者を目指すきっかけにもなって欲しいと思っています。

兵頭: 「あいさすmap」「あいさすGATE」が活用され、情報発信が活性化することで、学生や子どもたちが、最先端の研究に触れることで研究者を目指すきっかけにもなって欲しいと思っています。研究成果情報から興味を持ち、憧れの教授ができたり、ISASで学ぶ学生を増やしていきたいですね。

井上: ISASは、東京大学航空研究所、東京大学宇宙航空研究所、大学共同利用機関宇宙科学研究所、現在の宇宙航空研究開発機構と組織が変わってきました。研究機関でありながら、教育職の先生と学生と様々な研究者がいます。

兵頭: 研究を行う組織でありながら、プロジェクト開発も行い、学生指導も行う組織ですね。次世代の研究者や宇宙産業で働く人材を育てていくためにも、教育的な視点からも積極的な情報発信を行っていきたいですね。

斜木: ISASで開催した「中高大学生向けの個別進路相談会」での学生の声をご紹介すると、宇宙科学の研究者を目指したい、ISASの仕事に就きたいと考える学生の中には、「どの進路を選べばいいのか」「文系でも仕事に就けるのか」などの声があります。「あいさすmap」だけでなく、「あいさすGATE」に掲載されるインタビュー記事等からも、ISASで学ぶ学生や職員の様子を伝えていけるといいですね。
※2022年10月12日掲載「すべての宇宙好きへ、選択肢としての「JAXA学生受入制度」

ISASでどんな研究がされているのかがパッと一目でわかるMapが公開予定です!

土田: ISASには小惑星探査機「はやぶさ2」を始めとした大きなプロジェクト以外にも、プロジェクトを支える技術や研究など面白い研究がたくさんあるので、外部の方がもっとわかりやすく調べられるように、「あいさすGATE」から発信していきたいですね。

あいさす研究map
あいさす研究まっぷ イメージ図

兵頭: そうですね!その課題を解決するために、「あいさす研究map」というコンテンツを2023年度中の公開に向けて準備をしています。現状では、外部の方がISASで行われている研究を調べようとしたり、学生が研究室を調べようと思っても、なかなか必要な情報に辿り着けない問題があります。あいさす研究mapは、ISASでどんな研究がされているのかがパッと一目でわかるようになっています。動物園の園内マップのように、ここにはライオンがいます、キリンがいますなど、研究を調べるためのガイドとなるようなmapです。

久保: 研究室図鑑みたいなものができそうですね!

兵頭: 各研究の論文や記事などと紐づけるなど、常に情報がアップデートされるmapにしていきたいと思っています!

あいさすGATEに掲載されることが研究者のステータスになるように

論文へのGATEWAY
「論文へのGATEWAY」
<最新の研究成果論文の概要が紹介されている。>

早川: 所内から「自分の記事を載せてよ!」という声ももっと出て欲しいですね。「あいさすGATE」で紹介されていない研究者の方はまだたくさんいます。

八木: 若手研究者の成果やISASの研究室に所属する学生の声ももっと発信したいですね。我々もサポートをしますので、ぜひチャレンジして欲しいです。
「あいさすGATE」の目的は研究者の自発的な発信なので、目標としては「載せて欲しい!」とじゃんじゃん希望が来ることです。掲載されることが研究者のステータスになるようにしたいですね!

土田: 「あいさすGATE」に訪れてくださる方は専門家や学生以外にも、宇宙科学に関心のある一般の方もいらっしゃいます。インタビュー記事などを通して研究者の生の声を伝えることで、研究の面白さや研究者の人としての魅力など、宇宙科学をより身近に感じてもらえるような発信もしたいですね。宇宙科学のファンを増やしたいです!

早川: ISASの研究者の研究に取り組む姿勢や、研究者同士の活気あふれる活動の雰囲気は、文字や画面から必ず読み手に伝わると思います。「あいさすGATE」をアップデートしながら、これからもISASの雰囲気を大切に発信していきたいですね!

常に新しいことを取り入れていきたい!

井上: 「あいさすmap」「あいさすGATE」の公開から2年が経って、時間の経過とともに当初の目標とズレが生まれてしまう可能性もあります。ISASはプロジェクト等で個々に目標を持っている組織ですが、こういったISAS全体としての情報発信を同じ方向に向け続けることは重要ですね。

兵頭: サスティナブルな活動にする必要があると思っています。仕組みづくりや雰囲気づくり、体制づくりは重要ですね。

八木: ただ、あまりルーティーンの仕組みを作るとつまらなくなるとも思っています。今新しいことは半年後にはすぐに古くなるので、常に新しいことを取り入れていきたいですね。それから、このサイトをより発展させるためには、もっと厳しい声も聞きたいと思っています。まずは多くの方に関心を持ってサイトに訪れていただき、たくさんの声が入ってくるようにしていきたいですね!

兵頭: 研究者だけの組織ではなくて、事務系職員の方達や外部の方のアイディアや協力を受け入れてアップデートできる組織でありたいですし、ISASに所属する学生も取り込んで活動していきたいですね。

早川: ポジション関係なく、それぞれが持っている技術で貢献していきたいですね。情報発信という一つの目標に向かって、みんなで頑張りたいです。

一同:我々の活動はまだまだ止まらないですね!

インタビューの様子
座談会の様子