「JAXAの研究者等による女子中高大生のための個別進路相談会2022」を開催

ワーク・ライフ変革推進室
宇宙科学研究所 科学推進部


「JAXAの研究者等による女子中高大生のための個別進路相談会」ポスター
2022年度 告知ポスター

2022年10月、相模原キャンパス特別公開・前夕祭企画「JAXAの研究者等による女子中高大生のための個別進路相談会」を開催しました。1組あたりオンラインで20分、主として女子中学・高校・大学生(短大・高専生・大学院生も含む、親子やお友達等とのグループ参加や男子のお申し込みも可能)を対象に、進路選択等の相談に対し、JAXAの研究者等16名がアドバイザー(相談員)として個別に相談を伺いました。

データでみる参加者

参加者は総勢20組、うち8割以上が女性で、対象とした中学生から大学院生まで、すべての年齢層の方に参加いただきました。全体の約4割が保護者の方と一緒に参加されました。またオンライン開催ということもあり、北は青森県から南は鹿児島県までと、相模原キャンパスから遠方に在住の学生さんにも参加いただくことができました。

世代別・男女別
都道府県別
参加人数内訳

参加者に事前に行ったアンケートでは、希望するアドバイザーの分野は、理学系、工学系がともに半々の割合となりました。

相談してみたい分野

本相談会の開催情報については、宇宙科学研究所(ISAS)のウェブサイトおよび公式Twitterで周知を行い、JAXAのウェブサイト「ファン!ファン!JAXA!」のほか、「全国ダイバーシティネットワーク」のウェブサイトにも掲載を行いました。

参加者からのアンケート結果ではインターネットを見て応募してきた参加者が4割で、その中でISASの公式Twitterから情報を得たという参加者が6割以上を占めていることから、Twitterでの情報発信の重要性がわかる結果となりました。

何を見て応募したか
インターネットの内訳

「JAXAの研究者等」とは…

今回の進路相談会では、希望する分野やアドバイザーを申込時に聞く方式としました。JAXAというと理系出身の職員ばかりなのではと考えがちかもしれませんが、文系出身の職員や、より年代の近い大学院生(※)にも話を聞いてみたい、といった要望を複数いただいたことから、理系(理学系・工学系)出身の職員だけではなく、文系出身の職員、大学院生にも協力を仰ぎ、できるだけ相談者の希望に沿えるようなアドバイザーの配置を行いました。
(※JAXAでは、国内外の学生を機構の現場に受け入れて教育・研究、又は実習の指導等を行っています。詳しくはこちら

相談会の様子

いよいよ相談会当日。全員がweb会議に接続し、オンライン上でお互いの顔が見える状態になると、はじめに司会者から注意事項などの説明があり、JAXA側のメンバーが自身の業務や所属部署などを含めた自己紹介を行います。続いて、事前に相談者の方にいただいていた「聞いてみたいこと」を画面に表示させ、アドバイザーと司会者が回答や追加の質問をしながら相談者の方と会話を進めていきます。相談者の中には、はじめはかなり緊張している様子も見られたものの、徐々に積極的に追加の質問をされる姿もありました。

相談会当日の様子
相談会当日の様子

相談者からの質問・相談で多かったものは、進学に関する内容でした。宇宙に関わる仕事に就くためにはどういった学科や研究室に進めばよいか、学生のうちにどんなことを学んでおくべきか、といった質問や相談が多くありました。またJAXAや宇宙関連の仕事に就くこと全般に関する相談も多くいただきました。宇宙科学に興味をもったきっかけや時期について尋ねるものや、普段の仕事や研究内容についての質問、文系でも宇宙関連の仕事に就けるか、どのように仕事を覚えていったのか、などといった質問・相談がありました。そのほかには海外での活躍を視野に入れた質問や、進みたい分野は決まっているが、どんな選択肢があるかアドバイスが欲しい(高専からの大学編入や大学院進学)、理系科目が苦手だが宇宙に興味がある、といった相談もありました。相談者に近い経験を持つアドバイザーや、相談内容に応じた分野のアドバイザーが主に対応し、自身の経験に基づいてコメントさせていただきました。

リンク集
「研究者/研究情報」、「学ぶ/体験する」、「働く」などの様々な情報の掲載先をまとめた「リンク集」

制度やしくみ等に関する質問・相談には、参考となるサイトをまとめた「リンク集」を活用し、ウェブサイトのアドレスをチャット欄で共有したり、近日行われる予定の学会の情報などを画面に共有させながら相談に回答するなど、オンラインならではの良さも発揮されました。

会話形式で話が進む中で、ほとんどの相談者が、新たに疑問に思ったことなどを追加で質問されていました。20分という限られた時間でしたが、少しでも疑問や不安を解消したい、してあげたい、という思いは皆一緒です。「ほかに何か聞きたいことがありますか」と最後に尋ねると、会話を進める中で気になったことをいくつか質問される相談者も多かったですが、「今日の感想をお話ししたいと思います」と伝えてくださった方もいらっしゃいました。その方は相談会に申し込んだきっかけがJAXAの職員紹介のウェブサイトを見たことであり、その時「話を聞いてみたい」と思った職員がいま目の前にいて、最初はびっくりしたが本当にうれしい、ということをお話しいただき、JAXA側のメンバーが感激のあまり涙ぐんでしまう場面もありました! 

当日の質問・相談と回答を、一部紹介します。

与賀田 佳澄

与賀田 佳澄(地球外物質研究グループ 研究開発員)
2018年入社、理学府地球惑星科学専攻修了。

やりがいの持てる仕事は何ですか?(高校1年生)

与賀田: 二つあって、一つ目は『世界で初めて見る・わかるものや、初めての成功に関われること』で、それをチームでやり遂げる点にもとてもやりがいを感じています。もう一つは世界中のいろんな人に私たちの成果を知ってもらうという仕事。『小惑星リュウグウはこのように作られたんだ』と知ってもらったり、『宇宙が面白い』ということを皆さんに感じてもらえたりすると、やりがいを感じます。

山田 みづき

山田 みづき(調達部研究・事業調達室)
2016年入社、経済学部卒。

宇宙に関する知識がなくても、事務系であれば、法律や経済などの知識があればよいですか?(高校2年)

山田: 〇〇学部でないとだめ、という制約は全くありません。JAXAには様々なバックグラウンドを持った職員がおり、どんな分野の経験も役立てることができると思います。分野を限定せずに様々なことに好奇心や興味・関心をもって勉強しておいた方が、社会人になってから役に立つと思っています。

井上 博夏

井上 博夏(国際宇宙探査センター月極域探査機プロジェクト 研究開発員)
2016年入社、理工学研究科 基礎理工学専攻修了。

毎日研究をしているのですか。他の仕事はどのようなものがありますか。(大学1年)

井上: 論文を読んだり書いたりするだけでなく、どうすれば、(探査ローバを)安全に走らせることができるか、例えば、わざと車輪が外れるようローバに意地悪をして…、走行限界を調べる実験などで、実機を相手に試行錯誤している職員もいます。ソフトウェアのシミュレーションもそうですが、実験など泥臭い仕事も多いですね。

西山 万里

西山 万里(科学衛星運用・データ利用ユニット 研究開発員)
2016年入社、工学系研究科 電気系工学専攻修了。

宇宙系の分野には女性はやはり少ないのでしょうか?企業や研究所の女性に対する制度はどうなのか気になります。(高専5年)

西山: 個人の印象としては就職前に思っていたよりも多い印象を受けています。JAXAは女性も働きやすいのではないかと思います。周りには結婚、出産を経験している人が多いです。JAXAでの働き方については特別公開のコンテンツでも紹介しているので是非参考にしてほしいです。
→「リンク集」よりご確認いただけます。

上條 楓

上條 楓(施設部)
2018年入社、環境・社会理工学院 建築学系 都市・環境学コース修了

橋本 樹明

橋本 樹明(宇宙機応用工学研究系 教授、ワーク・ライフ変革推進室 協力員)
1990年入社、電気工学科 電気工学専攻 修了

もともと宇宙建築に興味がありますが、地上設備も興味があります。土木・建築系の学部を卒業し、JAXAで活躍している方はいますか?また、どのような業務を担当していますか?(高専3年)

上條: 自身は大学院で地震によって天井が落ちるメカニズムを研究していました。今はJAXAの施設部で業務を行っています。地上施設・設備の維持・補修を基盤として技術開発も行っている部署です。今後は興味がある宇宙建築の実現に関する活動も行いたいと考えております。現在はJAXAとして大々的には動きがあるわけではないですが、有志で小さな活動を始めており、いずれはそういった活動を大々的に行う目標を持っています。日本建築学会でも宇宙居住特別委員会が立ち上がり、建築業界全体で宇宙に関わろうとする動きもあります。また、土木系の職員は、H3ロケットが開発されるのに伴い、種子島では衛星組立棟を作る際に活躍しています。

橋本: 宇宙だけでなく、地上の設備でも大事ですね。例えば、ロケット打上げの時の音響振動(音波の跳ね上がり)による人工衛星への影響を少なくするためには、噴煙が横に延びて音が上がってこないように、発射台の下には溝が掘られています。これはまさに土木・建築の技術が必要です。そういう地上設備も宇宙開発を支えるうえでとても重要ですね。また、月面基地をどのように建設するかの研究も重要です。JAXA内にはそういう研究室はないのですが、大学では結構やっていて、それらの研究室と共同研究をしています。

高専卒でJAXAで働くことができる仕事はありますか?(高専3年) 

上條: 自分の同期36人中3人は高専卒の方々で皆、活躍しています。施設部にも、高専から専攻科➡JAXA入社といった方もおります。他にも高専から大学3年へ編入した方もいます。高専卒の方はいらっしゃるのでそこで何を学んで、JAXAでどう生かせるかが重要なのではないでしょうか。

橋本: 大学院生を指導していますが、高専卒で大学に編入し、大学院で宇宙研にきた、という学生が今まで指導した中でもかなり優秀だったという印象があります。高専では実際に手を動かして物作りをしていると思いますが、その技術をもって大学で理論的な勉強をすると身につくので、大学院で研究を行うのに良いのだと思います。いろんなキャリアパスがありますね。

開催を振り返って

参加された20名すべての方から開催後アンケートにご協力いただくことができました。「進路選択に少しでも参考になったかどうか」、の質問には「非常に参考になった」が75%、「参考になった」が25%とお答えいただく、という嬉しい内容でした。

以下に、いただいたコメント・感想の一部を紹介させていただきます。

「ISASで実際に研究、働いている方と交流を持つ機会はあまりないため、自分の将来やりたいことと似た環境にいらっしゃる方と直接お話しができて非常にありがたかった」
「苦手な理数系科目も頑張りたいと思った」
「これから頑張って宇宙業界を目指したいと思います」
「同じような境遇の人がいるんだな、と思って安心したし、今するべき事が以前より少しはっきりしたと思えました」
「女性でも十分に活躍できる場があると知ることができた」
「聞きたいことは全て教えていただけました。自分一人のために、司会者と二人のアドバイザーの方に対応していただき、とても贅沢な時間でした。大変満足しています」

完全オンラインによる個別進路相談会は今回が初めての試みとなりましたが、参加された20組すべての方から参加して良かったという趣旨の反応をいただき、学生の皆さんにとってこういった交流の機会が重要であることを、改めて実感させられました。オンラインで開催したことにより、対面開催では参加が難しい学生の方々ともお話できる貴重な機会となったと感じています。相談会自体は短い時間でしたが、相談者の真摯な問いかけ・相談に心を打たれ、アドバイザー・事務局ともに、さらなるモチベーション向上につながりました。また、参加後にいただいた意見・要望から、「実際に仕事・研究している姿を見る/知る機会が欲しい」という声があったことや、「宇宙分野は大学院進学を始めとするキャリアの構築の仕方や、実際の働き方というのがイメージしにくい領域のようであること」がわかり、今後のイベントや新たな交流の手法を検討するためのヒントもいただきました。今後も、特別公開など様々な機会を通じてこのような場を継続していきたいと考えています。

関連リンク