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用語解説
CFRP
マルマンバンド
M-V-5号機用衛星接手開発試験

 M-V-5号機で打ち上げられる衛星MUSES-C段目のキックモータKM-V2とをつなぐ衛星接手の開発試験を2月の終わりから3月中旬まで,相模原キャンパスの構造機能試験棟で行いました。

 この衛星接手は,柱の役割をするストリンガと非常に薄いパネルとで構成されるスキン・ストリンガ構造になっており,軽量化のため,材料としてCFRPを用いています。また,接手上端は,マルマンバンドを介して衛星と結合されています。通常,接手上端には衛星からほぼ均等に荷重が流れてきますが,MUSES-Cの構造が特殊なため,この接手では上端の4カ所に集中して荷重が入ってきます。一方,衛星接手の下端に結合されるキックモータではほぼ均等な荷重が衛星接手から流れると想定して設計しています。したがって,この衛星接手は単に荷重に耐えるだけでなく,衛星から集中して入ってきた荷重を分散させ,ほぼ均等な荷重でキックモータに流す役目もあります。

 試験は,マルマンバンドの分離性能を確認する分離試験から始まり,衛星接手の剛性試験,そして,最終的に破壊させる強度試験まで実施し,分離性能,耐荷性能,荷重分散性能とも所定の性能を有することが確認できました。これで,M-V-5号機の接手開発はすべて終了しました。

(峯杉賢治) 


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MUSES-C 第1次噛み合わせ試験

 小惑星への往復飛行をめざす,第20号科学衛星MUSES-Cプロジェクトは,3月22日のキックオフ会議をへて,4月2日よりいよいよ第次噛み合わせ試験を開始しました。すでに昨年はじめには,構造モデルによる機械環境試験を済ませ,熱真空試験を終了しておりましたが,この間,飛翔型の電子機器などハードウェアの完成を待っていました。幸い,大きな遅れもなく,実飛翔に供するハードウェアも完成し,すでにいくつかの試験を完了しています。

 MUSES-C は,わが国初の軸安定方式の惑星探査機であり,かつイオンエンジンを主推進機関とする独特のシステムが採られています。MUSES-C探査機は,TWTA3台SSPA 2台というまるで放送衛星と見間違うばかりの探査機で,従来と一風変わった試験となることでしょう。とくに,クリーンルームに真空ガラスチェンバを搬入し,試験時に,その中でイオンエンジンを駆動するという前例のない試験も行う予定です。

 工学実験衛星ということで,意識的に若手研究者,技術者に主導権を託して進めてきたこのプロジェクトですが,いま実ハードウェアが展開されるにいたって,緊張と期待が急速に高まりつつあります。

 試験は,6月末までの予定で,単体の機械環境試験をへて,本年12月からは,本格的な探査機の組立が始まります。

(川口淳一郎) 


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MUSES-C航法センサフィールド試験

 MUSES-C探査機に搭載される2種類のセンサ(LIDARLRF)の屋外性能試験を2001年3月26日〜30日の日程で鹿児島宇宙空間観測所(KSC)にて実施しました。LIDAR50km〜50mの距離で使用するレーザ高度計で,これまで光ファイバーを用いた室内試験を行ってきましたが,今回の試験では3.3km離れた実際の目標物までの距離を測定しました。LRF120m〜7mまでの近距離用のレーザ距離計で,鉛直方向から30°ずつ傾いた4ビーム構成になっています。いままで1ビーム毎の性能測定は行ってきましたが,4ビーム同時に,かつ太陽光の影響や岩,砂等の自然地形に対する反射特性,探査機が動いている場合の影響等を評価するために,写真のような高所作業車のバケットにセンサを取り付け,模擬地形までの距離を測るという試験を行いました。

 両センサともレーザ光を使用するため,安全管理には十二分の注意を払う必要があり,広大な領域に立ち入り制限をかけることが可能である KSCを実験場所として選択しました。本試験の実施にあたっては,職員各位ならび関係メーカの皆様に多大な支援をいただきました。紙面を借りてお礼申し上げます。

(橋本樹明) 


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用語解説
ファブリ・ペロー分光器
インド気球実験

 天体からの赤外線を観測するための気球実験を,インド(タタ基礎研究所)と日本(宇宙研,名古屋大学,東京大学,通信総合研究所)との協力により,1998年度より進めています。1999年度には初観測に成功しました。2000年度には,2種類の観測実験を行うべく準備を進めてきました。気球放球は,インド・デカン高原・ハイデラバード気球基地から行います。

 一つめの実験は,日本で開発した口径50cmの低背景放射望遠鏡に,ASTRO-F観測機器の実証モデルとなる二次元遠赤外線アレイ検出器を搭載し,効率の良い連続波観測を行おうとするものです。実験班は11月から現地入りし準備を進め,インド標準時間12月16日午後11時に放球に成功しました。4時間半の観測時間の間に,オリオン星生成領域のサーベイ観測などを行うことができました。観測を終え,実験班は一旦,日本に帰りました。

 幸いにして観測器はほぼ無傷で回収されましたので,次の観測を行うべく,2月のはじめに実験班は再びインド入りしました。この時期には同時に,もう一つの実験の準備も進めました。この実験は日本が開発したファブリ・ペロー分光器を,タタ研究所が開発した口径1m 気球望遠鏡に搭載し,大口径を活かした高分解能の遠赤外線分光観測を行おうとするものです。どちらの観測器も, 2月の後半には準備が完了し,放球の機会を待ちました。

 気球放球のためには,地上風が大変に穏やかでなければなりません。インドでは,夏の間は地上風がおちつかないため,夏が来る前に放球を行う必要があります。しかしながら,今年は例年になく早く夏が来てしまったようです。待てど暮らせど地上風が落ち着かないため,今季の放球は断念し,3月半ばに帰国しました。今年の秋に,再び実験を行うべく,両観測器とも現地に保管してあります。

(中川貴雄) 


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ブルース・マレー氏宇宙研来訪

 宇宙科学研究所が外部から点検・評価を受ける一環として,米国NASAジェット推進研究所元所長のブルース・マレー博士を,3月15・16日2日間宇宙科学研究所にお呼びし,ジェット推進研究所の組織・予算・運営や,プロジェクトの進め方等を紹介して頂きながら,宇宙科学研究所の進むべき方向につき提言を頂く機会を持った。宇宙研側からは,松尾所長・鶴田企画調整主幹(当時)以下8名が参加した。マレー氏は,ご高齢にも,また,旅の疲れにもかかわらず,2日間にわたり,たいへん精力的に話をしてくださり,氏に比べればずっと若いはずの日本側メンバーの方が,むしろ疲れ気味の印象であった。

 話は,まず,宇宙研側の現状の問題点や,将来計画の紹介からはじまった。この段階では,マレー氏より,「将来計画案が示されたが,まだ,単なる構想案に過ぎない。きちんとしたロードマップをつくるべきである。」と言った指摘も頂いた。続いて,氏より,JPLの組織や,プロジェクトの進め方等が紹介され,
「それぞれのすべき事を明確にし,責任の所在をはっきりさせること」,
「しっかりしたシステムエンジニアが所内にいること」,
「失敗をさけるため,各プロジェクトの内部評価をする組織を持つこと」
と言った点の大事さが指摘された。

 全体として,ジェット推進研究所の組織やプロジェクト運営は,宇宙研として参考になる面が多々あり,有益な会合を持つ事ができた。宇宙科学研究所としては,この結果も参考にしながら,今年度(2001年度),さらに広く,宇宙科学研究所のこれまでの活動,現在の組織・予算・運営,これからの長期将来構想,等々について点検・評価を受ける予定にしている。

(井上 一) 


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ESRANGE所長来所

 スウェーデンには,ヨーロッパの観測ロケット発射場の一つエスレンジ(ESRANGE)があります。スウェーデン宇宙公社(SSC:Swedish Space Corporation)の傘下にある発射場です。ここは東京大学宇宙航空研究所の時代からお付き合いの深い施設で,とくに地球周辺プラズマを観測するいわゆるEXOS系の科学衛星では,トラッキングの面でも大いに協力を仰いでいます。

 さる4月23日(月),そのエスレンジの所長Jan Englund氏が,Olle Nordberg氏および日本からのESRANGEにおける研究員である山内氏を伴って来所されました。松尾所長の他,松本,向井,中谷及び的川が対応しました。

 Englund所長は非常な親日家で,たびたび来所されており,話が友好的な雰囲気の中ではずみましたが,Nordberg氏が初めての来所なので,歓談の後に相模原キャンパス内の主な施設をご案内しました。

 飛翔体環境試験棟のクリーン・ルームでは,MUSES-Cがばらされた状態で置いてあったのが残念でしたが,この野心的なミッションについては十分理解していただいたと思います。また電波無響室では,電波だけでなく音も吸収する旨を説明したところ,Englund氏が「それじゃあ,カラオケでエコーを使っている人は困るなあ」と感慨を述べ,カラオケ好きの一面がのぞきました。事実,隔年日本で開かれているISTS(宇宙技術と科学の国際シンポジウム)では,スウェーデンとノルウェーの人々を囲んで“Scandinavian Night”を持つことが恒例になっており,2次会は必ずカラオケを楽しむことになっています。

 「ようこう」のデータ解析室では,仕事を中断して説明に立ってくれたHugh Hudson氏と話がはずんでいました。

 数年前に大気球観測で協力関係にあった矢島教授の部屋にお連れして,旧交を温めていただいた後に,3人は宇宙科学研究所を後にされました。なお,Englund氏は今年秋に所長の任期を終え,Nordberg氏がその後継につかれるとのことです。

(的川泰宣) 


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「X線天文学の新世紀」

 あすか衛星が8年の寿命を終え,米国のChandra衛星,欧州のNewton衛星が観測を始めて約1年が経った2001年3月6〜8日に,21世紀最初のX線天文学のシンポジウムが横浜で開催(文部科学省国際シンポジウム)された。テーマは20世紀に打ち上げられた衛星のデータから分って来た物理をまとめ,今後への課題を洗い出すこと,そして,21世紀X線天文学が取り組むべきサイエンスとそのための観測手段の開発の方向を明らかにすることであった。

 予想を越える283名(外国人126名)の参加があり,3日間ではこなし切れない程,盛り沢山な招待講演,口頭発表,多数のポスター発表が行われた。また,前後に各種の会議が設定され,各国の主要な研究者による,シンポジウム以外の研究打ち合わせが多数行われた。ここに示したポスターでは多数の外国人を交えて行われた会議を象徴する様な横浜港の版画を用いている。

(國枝秀世) 


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第20回 講演と映画の会

 さる4月14日(土),新宿駅前の安田生命ホールにおいて,恒例の講演と映画の会が開催されました。

 松尾所長の挨拶に始まり,中川貴雄,川口淳一郎両教授による講演が行われ質疑応答の後,ビデオ「大空から宇宙を探る-大気球」が上映されました。

 中川教授の講演は,古い天体観測の歴史から説き起こして,最新の天文衛星による観測の成果さらにはASTRO-Fの計画にいたるまでの一連の話,また,川口教授の講演は米ソによる惑星探査の幕開けのころから最新の,宇宙研の小惑星探査計画MUSES-Cの紹介,そして,将来の光子ロケットの夢に至るまでの紹介がありました。

 定員340人の会場に参加者338人と,ほぼ満席で,講演,質疑応答とも大変力のこもった熱気あふれる会となりました。司会を務めた私の一番の心残りは,30分ほど予定時間を超過し,質疑を途中で打ち切らざるを得なかったことでした。

(中谷一郎) 


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新A棟竣工

 本施設,宇宙科学研究実験の発展による研究部門(部門),研究施設等(施設)の増設と共同研究事業や国際協力による事業の増大にともない,計画されました。建設配置は,既存建物と将来計画建物を考慮して決め,既存棟の横に増築して各フロアを結ぶことでコミュニケーションもよりスムーズに図れるよう工夫しています。平面計画は,南側に研究室,事務室等の居室とコピー室,LAN室等の共通部を配置し,北側に実験室,将来増築の対応を考慮したコア部を配置しています。

 外装デザインは同一棟となる既存棟と同じ意匠設計とし,階高を揃える,窓廻りの断面を同じにする,外装タイルは同一のものを使用する等の計画とし,また西側外壁は将来計画があるため,増築の梁を設計し,仕上げは吹き付けのみとしています。さらに既存棟との接続部は外部階段を改修しガラスカーテンウォールで覆うことにより,長い壁面を分割する事で立面的にもアクセントをもたせています。

 設備設計では,研究室と実験室に昼光・人感センサーを使用し,在室時は点滅,人のいない時は消灯の制御をし,トイレにも自動照明による点灯方式を採用することで,消し忘れの防止をしています。空調設備は,実験室の使用時間が個別に要求されるため,運転操作及び制御が容易で,ランニング・コストを低減できるガスヒートポンプ・マルチ・エアコンを設置しています。また,水廻りの設備では,トイレの洗浄水に井水を利用する方式をとっています。

 以上,これはほんの一例ではありますが,多くの省エネ対策を施した新しい研究・実験棟は環境にやさしい最先端の建物になりました。

(塚越章三) 


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「あすか」の落下について

 1993年2月20日に鹿児島宇宙空間観測所より打ち上げられた日本のX線天文衛星「あすか」は,その後約8年間順調に観測運用が行われてきたが,最近の太陽活動の活発化に伴い徐々にその軌道高度を下げ,ついに今年3月2日には大気圏に再突入し,日本時間の14時20分頃東経163度,南緯8度の海域上空で消滅した。「あすか」は8年間の長期にわたり斬新な観測データを送り続けた後,折しもその前日の3月1日にお亡くなりになった,日本のX線天文学の創始者である小田稔先生の後を追うようにして燃え尽きた。

 実は「あすか」はその約半年前の2000年7月14日に発生した巨大太陽フレアーに起因する姿勢擾乱と,その後の緊急運用中に起こった蓄電池の電力枯渇のため2000年7月15日以降は正常な姿勢制御が行えず,観測を中止していた。従って「あすか」は打ち上げ後1993年4月に試験観測を開始してから正味の科学観測を行ったのは約7年3ヵ月となる。

 「あすか」はこの間に近傍の星生成領域から,超新星残骸,高密度X線連星,銀河系中心,さらに遠方の銀河,活動銀河核,銀河団,宇宙X線背景放射にわたる天文学の多くの分野において,世界のX線天文学をリードする数々の成果を挙げてきた。まさに「あすか」はドイツのROSAT衛星と共に1990年代X線天文学の発展を支え,チャンドラ衛星,XMMニュートン衛星による新世紀のX線天文学幕開けの原動力となってその使命を終えた。

 最後に,この衛星の製作,運用は宇宙研を始め,日米にわたる実に多くの大学・研究機関・メーカーの関係者の協力と共同作業によって初めて達成された事,そしてこのような協力のおかげで「あすか」がその使命を全うしえた事を報告し,協力頂いた皆様に心からお礼申し上げたい。

(長瀬文昭) 


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ISASニュース No.242 (無断転載不可)