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No.262 |
第4章 「ようこう」の科学成果ISASニュース 2003.1 No.262 |
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4.9 コロナの観測から分かった磁気周期活動
図4.25:「ようこう」軟X線観測によるコロナ活動の長期変化 太陽黒点は他の領域に比べて非常に強い磁場をもつ領域で,N極とS極のペアで現れては消えていきます。11年の間にはその発生領域の緯度中心が中緯度から赤道に向かって移動していき,縦軸に緯度,横軸に時間というグラフの中に黒点の位置をプロットしますと,赤道をはさんで両極に向けて羽を広げたような蝶型の模様が11年ごとに現れます。太陽黒点の近傍にも比較的磁場の強い領域があり,太陽コロナは黒点を除くこの磁場の強い領域では明るく,黒点から離れた磁場の弱い領域では暗くなりますので,「ようこう」で観測されたコロナの明るさで同じような図をつくると,やはり黒点の蝶型図と似た構造が見られます(図4.25)。黒点の蝶型図には見られないものとしては,11年よりも短い1〜2年程度の振動成分が見られることや,高緯度にも局所的に明るい構造が見られることです。前者は黒点を含む比較的磁場の強い領域が生成されている領域のより時間スケールの短い変化を,また後者は11年ごとに極性の反転する北極・南極における磁場の変化の過程をとらえていると考えられています。
図4.26:(左)極小期における太陽面上のコロナ小輝点の分布と
図4.27:(左)太陽黒点相対数の変化と(右)極大期(矢印位置)で正規化された 太陽コロナでは,黒点領域近傍に見られる明るい領域だけでなく,小さい輝点を数多くみることができます(X線小輝点;XBP,図4.26)。この小輝点の数が11年周期の間にどのように変化するかということについては,数年に一度の頻度で打ち上げられたNASAの観測ロケットでのX線観測を用いて今から20年ほど前に調べられました。それによると,小輝点の数は大きく変動し太陽11年周期とは位相が180度ずれる,すなわち,黒点数が多い活動期にはこの輝点数が少なく,黒点数が少ないときに多くなる,という結果でした。「ようこう」が取得した10年程度の連続観測データからこの輝点数を詳細に調べてみますと,図4.27で示されるように極小期に大きな増加はなく,おおまかにいって太陽11年周期によらないということが分かりました。コロナと太陽表面の磁場の同時観測からは,この輝点はN極とS極という異なる極性をもつ磁場が衝突して発生することが知られていますので,衝突して輝点を発生するのに寄与している磁場は,太陽周期によらない,黒点とは別起源のものであるというように考えることができます。このように太陽には,黒点のように11年で変化する磁場成分と,小輝点に関連する11年周期によらない磁場成分があることが分かります。これらの磁場が,どのように太陽の中で作られているかということを理解していくことがこれからの課題です。 (原 弘久,中久保 佳代子) |
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