所長 松 尾 弘 毅
明けましておめでとうございます。
いよいよ3機関統合の年を迎えました。現況は昨11月号に詳しすぎる程に述べましたので,ここでは省略致しますが,新機関のための個別法は去る12月6日に国会を通過し,今年の10月からの新機関の発足が確定しました。今後は,新機関の近々未来を律する中期計画の策定,評価の在り方も必ずしも確定していない状況で,いかに魅力的なまた臨機の対応の出来る柔軟な案を出せるかが,特に重要になります。
昨年は,所員一同統合の実務に追われ,今年も前半は間違いなくそうなるでしょうが,これはいずれも宇宙科学の将来の大発展へ向けてのコストと思いたいものです。
さて,その本業ですが,M-Vの復活により今年から堰を切ったように科学衛星の打上げが始まります。昨年はいわばそのための準備の年でした。その中にあって,年明けの超高速再突入実験機DASHの失敗は痛い教訓でしたが,S-310ロケットによる観測条件にも恵まれた電離層の満点の観測,三陸実験場からの大気球による高度世界記録達成などの目に見える成果もありました。
M-Vの打上げ再開第1号のMUSES-Cは当初昨12月に予定されていましたが,準備になお慎重を期する為,本年の5月に延期され現在作業を進めています。惑星間飛行に固有の条件からどうしても5月に打上げ時期を変更する必要があったのですが,漁業関係を始めとする関連の方々のご尽力とご理解により実現することになりました。改めて御礼申し上げます。
宇宙科学研究所の輝かしい伝統に一区切りつけるのであるから,感慨も一入である,とも書けますし,伝統を更に発展させるためにもその第1歩であるMUSES-Cの打上げに向けて平静に全力を傾注したい,とも結べます。どちらも本当です。
(まつお・ひろき)