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衛星「おおすみ」

青空の下での記者会見

「おおすみ」の成功後、青空の下での記者会見

軌道

「おおすみ」の軌道
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「おおすみ」は、チタニウム合金で出来た第4段モータの上にアルミニウムのカバーを持つ計器部が取り付けられており、外側には2本のフック型アンテナ、4本のベリリウムカッパーのホイップ型アンテナ(円偏波)が付いている。重量は計器部8.9kg、第4段モータの燃焼後重量14.9kgを合わせて23.8kgである。

搭載機器は、縦方向精密加速度計、縦方向加速度計、ストレーンゲージ型温度計、テレメータ送信機、ビーコン送信機、パイロット送信機などで、その他に送信機等へ電源を供給する容量5AHの酸化銀・亜鉛電池が搭載されている。

第4段打出し直後から、追跡に協力した米国航空宇宙局の各追跡局で次々とテレメータ信号電波と136MHzビーコン電波をとらえたとの連絡が入った。グアム、ハワイ、キトー、サンチアゴ、ヨハネスブルグ、......。

内之浦では、発射後約2時間半を経過した15時56分10秒から16時06分54秒までの間、「おおすみ」の信号電波の受信に成功、本当に地球を1周まわってきたことを実感した。実験班全員の勝利の瞬間でもあった。まんじりともせずテレメータセンターの片隅で受信の瞬間を待ちつづけていた実験主任の野村民也先生の心境はいかばかりであったか。

内之浦では、当初より軌道の分散が大きいことが予想されたため、最初に衛星を捕捉する受信アンテナは、気象台地にあったビーム幅が広い捕捉用の136MHzトラッキングアンテナとテレメータ台地の口径が大きい18mφパラボラアンテナを使用した。「おおすみ」からの信号電波は予想より約2分半遅れて西の山の方向から到来した。両アンテナとも正常に捕捉受信し追跡することができた。約10分間の受信だったが、搭載機器は正常で、温度計測によればロケットモータケース表面の温度(T1)が約50℃、計器部搭載のテレメータ送信機水晶発振部の温度(T2)が68℃と、かなり高温になっていた。

受信レベルとしては、136MHzのビーコン信号は正常で、ロックオンしたときのレベルが-133dBm、最高で-113dBmだった。296.7MHzパイロット信号および295.6MHzテレメータ信号は低めだった。

その後、第2周目の受信を18時30分06秒から18時41分23秒の間に行ったが、受信レベルは低く、翌2月12日第6周の受信はきわめて微弱な信号を捉えたのみで、第7周の受信も試みたが受信できなかった。米国航空宇宙局の追跡でも、南アフリカのヨハネスブルグ局が、2月12日4時30分(日本時間)に弱い信号電波を受信したのが最後だった。この結果、「おおすみ」の信号は発射後14~15時間で途絶したものと思われる。

搭載した電池は30時間以上の寿命と推定されていたが、予想以上の高温になったため電池の容量が急速に失われ、予定より早く信号の途絶を招いたと考えられる。電池が搭載されている計器部の温度上昇は、第4段燃焼の際にモーター部に蓄積した熱が伝わったもので、設計の際にモータケースを黒色にして放熱を良くしたり、機器の取り付けの熱絶縁、機器をアルミニウム蒸着のマイラー膜で包む放射防御等対策はされていたが、予想以上の蓄積熱量があり放熱しにくいところがあったものと考えられる。後日、送信機の温度が上がると周波数が高くなる特性があるので、搭載したものと同等のもので温度試験を行った結果、予想以上に高温まで電波を出し続けていたことが確認された。

「おおすみ」の軌道は遠地点5,151km、近地点337kmと、当初の予想に比べ近地点が低く遠地点がいちじるしく高いものになったが、飛しょう経路が低かったのと、第4段の速度成分が大きかったことによるものであった。

衛星の軌道推定は18mφパラボラアンテナが296.70MHzのパイロット信号を自動追尾した時の角度データと136MHzビーコン信号のドップラー受信機から得られるドップラーデータを用いて行われた。即ち、ドップラー・シフトから距離変化率を求め、これを積分して角度データと組み合わせることによって軌道推定を行う方法が取られた。推定は良く合っており、追跡のための有力なデータを提供した。

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