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気球からの落下式無重力実験の動作試験に成功


写真1 放球時の大気球と落下実験機体

 2006年5月27日6時4分に、平成18年度第一次気球実験の1号機として、無重力実験装置の動作試験を目的としたB200-6号機が放球されました(写真1)。同日9時20分に高度41.2kmから無重力実験装置を搭載した機体が切り離され、自由落下中の約20秒間で動作試験を行った後、パラシュートを開傘、緩降下して海上に着水、実験装置は無事回収されました。

 無重力落下塔や航空機の無重力飛行では実現できない1分間程度の長時間の無重力実験を、観測ロケットや人工衛星といった高価で準備に時間を要する打上げ手段を使わずに実現するため、大気球により高々度から実験装置を落下させるシステムの開発をしています。詳細は『ISASニュース』2005年9月号 の「気球を使った微小重力実験システムの開発とその将来」を参照ください。今回の気球実験の目的は、約200kgの実験機体(ゴンドラ部と合わせると約300kg)を40km以上の高度まで上げる新開発の気球の飛翔試験、理想的な無重力環境を実現するために必要な二重カプセル構造(写真2)の制御動作の試験、実験装置を海上で回収する方法の実証などであり、これらすべてに成功しました。特に気球については、高々度まで飛翔させるために極薄のフィルムを使用する必要がありますが、重い実験機体をつり下げて飛翔させると破れてしまいます。そこで、力のかかる部分を多層構造にして補強する新方式を開発しました。また、実験機体が4mと細長いため、その放球方法にも工夫が必要で、放球装置の改良も行いました。多くの無重力実験では実験後の供試体を回収することが重要なのですが、気球追跡班、回収船、ヘリコプターの連携により、問題なく実現できました。今後は、無重力継続時間を延ばすなどの改良を加え、実用的な無重力実験システムとして完成させたいと考えています。

写真2 自由落下中の無重力実験部。機体の内部で浮いており、外からの力を受けない二重カプセル構造になっている。 写真3 二つの液体間の気泡の移動

 なお、無重力実験の例として搭載した表面張力の異なる二つの液体の実験では、気泡が表面張力のより小さい液体側へ移動することが確認され(写真3)、無重力実験装置として十分に機能することも実証されました。

(橋本樹明) 


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