宇宙研で生物の研究をしているというのは、皆さんにとって意外なことらしいですね。宇宙研の見学に来た中高生は、ロケットや衛星、天文の話を聞いた後、最後にこの研究室に案内されることが多いのですが、カエルの置物やウニの水槽を見て驚きます。宇宙の話を聞きに来たのに、思いがけず生物の話を聞いた。そのギャップが印象に残るようです。宇宙研にいて「宇宙は面白い」というのは当たり前。宇宙研にいて「生き物は面白い」という人がいてもいいでしょう。
最近は、中学や高校で授業の支援をしたり、一般向けの講演をしたり、教育・普及の仕事も増えています。宇宙教育センター長の的川泰宣先生はよく「子供の心に火をつけるのが大事」と言いますが、難しいです。科学は芸術と同じだと思うんです。人を楽しませ、豊かにする。もちろん、研究が進んで社会の役に立つことが出てくるかもしれないけれども、すべての科学が最初からそれを目指しているわけではありません。「何の役に立つのですか」と質問する子供がいますが、その前に純粋に楽しんでほしい。子供たちに、すごいとか、きれいとか、感動してもらうためにはどうしたらいいか、私たちがもっと勉強していかなければなりません。