No.300e
2006.3 号外

ISASニュース 2006.3 号外 No.300e 


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宇宙研の思い出 

技術開発部飛翔体技術グループ 瀬 尾 基 治  


ラムダランチャでの発射準備作業(筆者は右から二人目)

 昭和43年6月に岡山天体物理観測所から配置換えになり、駒場の宇宙研40号館2階にお世話になることになりました。私は高中泓澄先生のもとでKE班(KE:鹿児島観測所地上設備)の仕事をさせていただくことになり、9月に初めてロケット実験に参加させていただきました。当時は新大阪まで新幹線で行き、新大阪から鹿児島まで夜行寝台で行き、ぼさど桟橋から垂水まで40分ぐらい船に乗り、垂水から宇宙研のマイクロバスに乗って3〜4時間曲がりくねった道を走り、やっと内之浦へ着いたときは夕方でした。宿は中俣旅館で、そこで初めて芋焼酎を飲みました。酒好きの私は、あまり苦もなく慣れてしまいました。

 実験時には、KE班として作業を行ってきました。仕事としてはロケットの発射回線チェックおよび放送設備などの保守点検整備で、いろいろな作業がありました。そのうちロケットの電源担当となり、搭載用電池も担当することになりました。当時ロケット実験は8〜9月と1〜2月の年2回でした。一つの実験で8〜10機の観測ロケットを打ち上げることも珍しくはなく、1日に2機打ち上げたことも何回かありました。中村純二先生の発光雲の実験は、その美しさに感動致しました。そのときに私が写した発光雲の写真を先生にお見せしたところ、写真を所望され、お渡しした思い出があります。L−4S−5号機による「おおすみ」打上げ実験に参加し、ラムダランチャの上に登り着脱コネクタの接続作業などを行ったことが、昨日のことのように思い出されます。ラムダランチャは、三石智先生が苦労して設計されたと聞きました。昨年夏に上野の国立科学博物館に行く機会があり、展示されているラムダランチャを眺めて帰り、その数日後、三石先生が88歳の誕生日に他界されたとのはがきをお嬢さまから受け取りました。宇宙研の科学衛星打上げすべてに微力ながら携わることができ、寄せ書きに自分の名前を記すことができたことは、心の糧として大切にしていきたい。ハレー彗星接近のときには竹内端夫先生、冨田弘一郎先生(元国立天文台)のご指導によりシュミットカメラによる光学観測に参加させていただいたことに、心より感謝致します。

 能代実験場へは、昭和44年3月に初めて行きました。能代へは寝台急行「津軽」で行きました。上野駅のホームで見知らぬ人から「いい仕事があるよ」と声を掛けられたことが何回かありました。能代では、マイナス10℃の世界を思い知らされました。私の能代での仕事はNE通信(NE:能代実験場地上設備)で、スタンド点と総務班、本部に電話線を引いて磁石式の電話機を取り付け、1回ベルが鳴った場合は本部、2回鳴った場合は総務班、3回鳴った場合はスタンド点と決めて使用しました。連絡用のスピーカを場内に取り付け、スタンド点から2km北と南と浅内方向に警戒のためのスピーカの配線を行いました。現在の実験場では想像もつかない状態でした。

 その後、液体水素エンジン実験の作業も手伝うことになり、ガス供給班として実験用高圧ガスの供給、高圧ガス設備の保守および操作、定期自主検査、秋田県による年1回の保安検査受検などを行い、現在に至っています。

 7〜8年くらい前から大気球実験の仲間に加えていただき、ランチャ班としてゴンドラ作り、放球作業などにかかわってきました。ほとんど手作りの観測機器に感心し、その技術と努力には頭が下がり、仲間に加えていただいたことを感謝致しております。放球後、回収船での回収作業では気球がなかなか見つからず、1日中船に乗っていたこともありました。昨年12月にはブラジル実験に参加させていただき、貴重な体験をさせていただきました。

 とりとめのない文章になってしまいましたが、いろいろなことが走馬灯のように思い出されるのは、内之浦の芋焼酎、能代の日本酒、三陸の岩魚骨酒の飲み過ぎによる後遺症かな?

 野村民也先生、林友直先生、高中泓澄先生、長谷部望先生、諸先輩、同僚、関係メーカーの方々など、多くの人の支えによって38年間無事勤務することができましたことを心より感謝するとともに、JAXAのさらなる発展を祈っています。皆さん長い間、誠にありがとうございました。

(せお・もとはる)


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