No.300e
2006.3 号外

ISASニュース 2006.3 号外 No.300e 


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映像記録 

システム運用部情報処理グループ 杉 山 吉 昭  


「おおすみ」のフライトにも参加。「おおすみ」記念碑の前にて。

 鹿児島県内之浦におけるロケット飛翔実験。ロケットはすでに整備棟内にセットされ、間もなく大扉が開き、ランチャーが旋回しロケット全体が姿を現す。映像撮影の仕事が分刻みで進んでいく。発射角度の設定も完了し、記録班は発射状況を撮影するために最適な場所へ急いで移動する。発射3分前。カウントダウンも順調に進み、カメラのレンズはロケットに焦点を合わせ、発射を待つだけの状態になっている。

 ここまで来るとカメラの最終チェックも完了し、カメラには触れたくない心境になる。大空にキャンパスをイメージし、ロケットの先端をフレームアウトさせない構図を目に焼き付け、ロケットが発射されるのを千秋の思いで待つ。発射準備完了、コントローラスタートの発射60秒前のアナウンス。発射15秒前でSPGGが点火し、黒煙が噴射し始めるのをめどに、利き手の右手には1枚撮影用中判カメラのエアレリーズを握り、左手には連続撮影用カメラのスイッチを持ち、緊張の糸が張り詰める。発射2秒前、左手が動きスイッチを入れ、カメラの駆動音を耳で確認しつつ発射0秒の点火を待つ。点火後、噴射が起こり、ロケットはゆっくりと滑るようにランチャーを離脱し、急激に速度を速め上昇する。目は鋭くロケットの先端を追い、イメージした大空のキャンパスにロケット全体が入った瞬間、右手が鋭く動き、1枚の撮影を行う。映像記録班が特にこだわり続けてきた1枚の撮影が完了する。これは記録班の特権で、私だけが味わえる醍醐味と緊張感です。

 放球3秒前、2秒、1秒、はい放球。ここは、岩手県三陸町にある大気球観測所である。まさに大型気球が放球準備を完了し、大空へ向かって飛び立つ瞬間を撮影している。大気球はロケットと違い毎秒5mの速度でゆっくりと上昇し、青空に吸い込まれていく。数時間から数十時間後、観測を終了すると観測器および気球を回収する。記録班も実験スケジュールに沿って記録撮影を行ってきた。また、三陸基地の前身である福島県原ノ町での大気球実験、内之浦での日中共同大気球実験や有翼飛翔体大気圏再突入実験に参加し、記録撮影ができたことも忘れられないものとなっている。

 能代地上燃焼実験などにも数多く参加し、M−」型燃焼試験、ATR燃焼試験など多くの記録写真を撮像することができた。有翼飛翔体滑空試験では、ヘリコプターの真下にカメラを取り付け撮影した。またRVT飛翔実験では、初めて地上から約60cm飛ぶ瞬間にも立ち会うことができた。また、定点撮影で臼田64mアンテナ建設過程撮像。どれを取っても私には忘れられないひとこまである。

 近年は、ISAS広報、JAXA本部広報、報道班などへデジタル画像データを迅速に提供する仕事も増え、記録班は大変忙しくなってきている。

 いろいろな実験に参加して、記録撮影を行ってきました。今後はデジタルカメラが写真の主流になりつつありますが、アナログとデジタルのそれぞれ固有の利点と特徴を生かしながら、共存していくと考えています。最後に、フィルムが存続する限り、今後ともアナログでの撮影を継続していっていただきたいとお願い致します。JAXAおよびISASがますます発展することを祈念しつつ、筆をおくことにします。ありがとうございました。

(すぎやま・よしあき)


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