地上電波望遠鏡
「はるか」は地上の電波望遠鏡と共同して観測することによって,巨大な電波望遠鏡を宇宙に作り上げています。地上の電波望遠鏡なしには観測が成り立ちません。宇宙を観測する電波望遠鏡のうちVLBI観測に参加できるものは世界中に約30局あります。そのほとんどすべてがVSOP観測に参加しています。国別には日本,アメリカ,オーストラリア,イギリス,ドイツ,オランダ,イタリア,スウェーデン,ポーランド,ウクライナ,中国,南アフリカと12の国が参加しています。日本では,臼田宇宙空間観測所の64mアンテナや通信総合研究所の34mアンテナ,さらに国立天文台の45mアンテナが参加しています。
各電波望遠鏡は安定な周波数源である水素メーザー時計を持ち,「はるか」と同時に観測した天体の信号を磁気テープに記録します。天体の信号はたいへん微弱ですから低雑音で増幅する必要があり,多くの地上電波望遠鏡では冷却して雑音を極力落した受信装置を使用します。臼田64mアンテナは深宇宙探査衛星の受信ばかりではなく,世界で唯一,1.6GHz帯,5GHz帯,22GHz帯を同時受信できる地上電波望遠鏡としても活躍しています。64mのアンテナで集光された電波は各周波数帯の冷却された受信装置に入り増幅されます。
各地上望遠鏡は,それぞれの他の観測や業務(例えば臼田では「のぞみ」や「Geotail」の追跡業務)とのスケジュール調整を行いながら,多い局では年間1,500時間以上の観測時間をVSOPに割り当てています。これもVSOP観測への期待の大きさを物語っています。
(小林秀行)
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