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「はるか」の大型アンテナは外径が10mもあり,我々がこれまで作ったものではもっとも巨大な展開構造物で,設計の方法,構造解析の方法,使用する材料,試験のやりかたなどなにもかも新しく作り出す必要がありました。
何千本ものケーブルをいかに緩まずにはりめぐらすことができるか,鏡面をいかにひっかかりなく,最後まで開かせることができるか,鏡面精度をいかにして出すか等が最大の課題でした。何度も展開試験を繰り返しました。最初はひっかかりが甚だしく,とても最後まで開ける見込みはないようにおもえましたが,そのうちにどの部分がどのようなひっかかりをするかが明確になり,ひっかかり防止用膜をはりめぐらせることにより解決できました。鏡面の調整は約1000本のネジで行いました。鏡面形状を1回測定しその結果にもとづいて調整を行うのに約5日かかり,それを繰り返して結局鏡面調整に10ヶ月かかりました。
宇宙に大きな展開パラボラアンテナを花のように開かせる,ということは我々のような宇宙構造技術者にとって,ひとつの大きな夢でした。「はるか」の大型アンテナ開発に携わり,その夢を実現する機会が与えられたことに,感謝しています。
(三菱電機・井上登志夫)

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