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科学衛星

8.衛星の追跡管制

ASTRO-Dは1993年2月20日に打ち上げられ、近地点520km、遠地点620kmの略円軌道に投入されました。軌道に乗った衛星は「あすか」と命名されました。英語ではASCAと書くことにしました。Advanced Satellite for Cosmology and Astrophysicsを略したものです。新しい名前の一つの理由は、太陽電池パドルをひろげた衛星の姿が、宇宙へ飛翔する「鳥」に似ていることです。つまり「飛ぶ鳥」という意味で「飛鳥(あすか)」ですね。もう一つの意味は、この衛星の打上げ成功が日本の宇宙科学を全面的に開花させる重要なステップになるということです。それはあたかも、日本の仏教文化が聖徳太子の「飛鳥時代」に花開き、日本の夜明けを告げたことを連想させるものです。

「あすか」の軌道上のキー・イベントはすべて成功裏に行われました。性能確認とテスト観測が1993年10月まで続けられ、以後はゲスト観測に入りました。性能確認のための観測の間に、およそ150個の目標天体に対して観測日程が組まれ、そのほとんどが観測されました。その目標は以下のようなものです:

恒星 20
X線連星 25
超新星残骸 23
銀河 22
銀河団 23
活動銀河核 26
X線背景放射 10

ゲスト観測の段階に入ると、「あすか」の観測時間は、競争方式で日米の研究者に開放されました。科学機器や衛星サブシステムの再較正や再調整のために約5%をとっておいて、残りの観測時間は、次のように割り当てられました:

60% 日本人の研究者
15% アメリカの研究者
25% 日本とアメリカの共同観測

第1ラウンドのゲスト観測の募集に対して、約200の提案が宇宙科学研究所に、また250の提案がNASAに提出されました。これらの提案の中から、約165の提案(同じ対象は統合)と215個の天体(日本119、アメリカ38、共同57)が選定されました。さまざまなX線源を分類してその目標の数を示すと、以下のようになります:

恒星 43
X線連星 31
超新星残骸 24
銀河 25
銀河団 34
活動銀河核 56
X線背景放射 2

「あすか」のオペレーションは、主として「あすか」チームの日本の科学者(大学院生を含む)によって管理されています。「あすか」チームのメンバーの所属機関と数を表に示し、「あすか」のオペレーションのシステム・ダイアグラムを図で示してあります。このチームは、観測をスケジュール化し、衛星を管制し、データを集め、衛星とそのペイロードの健康状態をチェックします。衛星は1日に地球を15周しますが、そのうち約10回、衛星と地上局との交信が行われています。そのうちの5回が鹿児島宇宙空間観測所(現内之浦宇宙空間観測所)、他の5回は、マドリード、キャンベラ、ゴールドストーンにあるNASAの深宇宙ネットワークが担当しています。「あすか」が得たすべてのデータは、衛星の姿勢や軌道の情報とともに、宇宙科学研究所に保管され、日本人研究者に配られます。またデータは、アメリカ・ゴダード宇宙飛行センターの「あすかゲスト観測者施設」にも送られ、アメリカのゲスト観測者に配られます。