Last Modified:
10/27/2020 15:53:34
2009年度冬学期 東京大学教養学部 (前期過程)「宇宙科学 II」
更新履歴:
2010年05月14日 --- 授業評価をリンク
2010年04月18日 --- 試験問題、解答、結果、平均点などをアップ。
2010年01月24日 --- 最終講義ノートをアップ。
2010年01月20日 --- 第12回の講義内容、第13回の予定をアップ。
2010年01月09日 --- 第11回の講義ノートをアップ。
2009年12月28日 --- 第9,10回の講義ノートをアップ。
2009年12月08日 --- 第8回の講義ノートをアップ。
2009年11月30日 --- 第7回の講義ノートをアップ。
2009年11月16日 --- 第6回のハンドアウトをアップ。
2009年11月09日 --- 第5回の講義ノートをアップ。
2009年11月02日 --- 第4回の講義ノートをアップ。
2009年10月27日 --- 第3回の講義ノートをアップ。
2009年10月25日 --- Operaで表示がおかしかったことを指摘されて、Another HTML-lintを使ってhtml文法を修正。文法チェックで100点を貰いました!
2009年10月19日 --- 第2回以降の講義予定、第2回の講義ノートをアップ。
2009年10月12日 --- 10/5に使ったパワーポイントファイルとPDFをアップ。
2009年10月05日 --- 作成
試験の結果
2月1日に試験を行いました。
問題用紙、
解答用紙、
問題と解答
200点満点で、1/2を掛けて100点満点に直しました。
平均68.6点、メジアン(中間値)70.5点
優(100-80)7人、良(79-65)14人、可(64-50)7人、不可(49以下)2人。
単純な講義ノートの穴埋め問題なので、もうちょっと良い点を期待していましたが、
得点の分布としては適当かな?
講義題目
X線天文学を通じて学ぶ基礎的な物理と数学
授業の目標、概要
大学の1、2年生で学ぶ基礎的な物理学と数学が、最前線の宇宙科学、特にX線天文学の研究の現場でどのように使われているか、具体的な例を通じて学習する。本講義が学生諸君が受講している物理・数学の講義の復習または予習になり、実際的な問題に触れることによって基礎的な物理と数学の理解が深まることを期待している。これら物理・数学の講義が「縦糸」だとすると、
宇宙科学を題材としてそれらを横断的に結びつける「横糸」になるような講義を目指している。
中性子星やブラックホールなど、X線天文学の観測対象について学習するだけでなく、
人工衛星、衛星運用、データ処理など、研究を遂行するために我々研究者が日々の研究や業務の現場で直面している課題についても紹介する。
各回ごとにトピックを選び、その話題は一回の講義の中で、できるだけ完結するようにしたい。また、
観測や研究集会に参加した折などに、最先端のX線天文学研究の話題も紹介したい。
昨年度、一昨年度の講義のホームページも参考にしてください。
基本的に昨年度の講義に沿ってやろうと思いますが、上述の講義の目標に沿って、
いくつか新たな内容を盛り込む予定です。
授業の方法
古典的ではあるが板書を用い、学生諸君にはノートを取って、手を動かして理解して欲しい。
式の変形や具体的な数字を使って計算して理解することはとても重要。
使い慣れた計算機を持ってくること(というか、理科系の学生ならばいつも持ち歩くべき)。
成績評価方法
学期末に試験を行う。どのような問題を出すかは、講義の中で不定期に公言する予定である。
一昨年度、昨年度の試験問題と解答をホームページから公開しているので、そちらも参考にして欲しい。
講義ノートについて
板書の内容は講義後に、このホームページで公開します。ノートはlatexで書いて、それを
latex2html
でhtmlに変換しています。latexのソース(日本語コードはeuc)も置いておきます。
専門分野に依ってはlatexは必須なので(投稿論文をlatexで書くことが要求されることも
多いです)、ソースコードがlatexを
学ぶ際の
参考になるかもしれません。latex中で、PASJから借りてきたスタイルファイルを使っています。
latexとlatex2htmlのコマンドを使い分けたりするのも、結構
面倒だったりします。\usepackage{html}、\usepackage{url}、
\latexhtml、\htmlimageなどを使っています。
詳細はソースを参照してください。
一部、htmlでは式やテキストが読み取れないこともあるようですが
(latex2htmlのバグ?)、
印刷版は大丈夫です。また、pdfの図中の
日本語文字が文字化けすることがあるようです。ポストスクリプトファイル版では正しく出ています
。
最終講義の後に、全講義ノートを印刷して渡す予定です。
講義ノート
すいません!計算機のトラブルで、htmlバージョンを壊してしまいました。PDFを見てください。
PDFファイル
授業でやったこと
第1回(2009/10/5) --- 講義ガイダンス、講師自己紹介。宇宙の進化、X線天文学の歴史を駆け足でレビュー
以下のppt(Powerpoint file)を見るには、Powerpointまたは同等のソフト、あるいはフリーの
Powerpoint Viewerが必要です
授業で使ったpptファイル、
それをpdf化したもの
授業で見せた「すざく」 衛星の打ち上げムービー(Quick Time)
講義の中で紹介した、2002年ノーベル物理学賞の解説。
X線天文学とニュートリノ天文学の非常に良い解説記事です。
ご参考までに、私の研究と業務の一般向け解説記事です:
「中くらいのブラックホール」は存在するか?
ISASニュース2005年10月号
「銀河面リッジからのX線放射は拡散成分か、点源の重ね合わせか?」
天文月報 2007年7月号
「データ共有という理念」日本物理学会誌 2008年9月号
よりくだけた一般向け読み物、「ISASメールマガジン」より、
私が興味を持っている三つの謎について、そのうち、
銀河面リッジからのX線放射について。
第2回(2009/10/19)
回転による座標変換:天球座標、座標変換、直交変換、直交行列の性質
第3回(2009/10/26)
オイラー角と座標変換:オイラーの定理、オイラー角と変換行列、具体的な座標変換の例
ハンドアウト1:(ps.gz,pdf):天球の説明、赤道座標、黄道座標、銀河座標の関係
(すいません、pdfは一部文字化けしてます)。
参考までに、図2を描くのに使ったFORTRANプログラム。
グラフィックパッケージとしてPGPLOTを使っています。
ハンドアウト2:赤道座標から銀河座標への変換
第4回(2009/11/02)
天球座標の変換、人工衛星の姿勢
ハンドアウト:あすか、すざく、あかり衛星の紹介(衛星座標系を理解するために)
第5回(2009/11/09)
天文衛星による観測、衛星座標から天球座標への変換、人工衛星の姿勢と四元数
ハンドアウト:人工衛星の姿勢と視野
第6回(2009/11/16)
四元数と三次元空間における回転、人工衛星の姿勢と四元数、座標変換と四元数
ハンドアウト1:人工衛星のある姿勢から別の姿勢への変換(四元数を用いて)
ハンドアウト2:赤道座標から銀河座標への変換(オイラー角を用いた場合と四元数を用いた場合の比較)
これらの図とアニメーションを作成する際に用いたプログラムのソースコード(QparAtt.f, PlotEuler.f)。
第7回(2009/11/30)
LHCについて,超光速運動 (superluminal motion)。特殊相対原理、特殊相対性理論、ローレンツ変換
ハンドアウト:Pearson et al. 1981, Nature, 290, 365, "Superluminal expansion of quasar 3C273"のコピーを配りました。
講義で特殊相対論をやろうとしたら、ちょうどタイムリーにCERNのLHCが稼働し始めました。CERNのホームページ(https://cern.ch)に行くと、その解説ビデオが見られます。
LHCの簡単な解説はこちら。光速の0.999999991倍まで陽子を加速するそうです。これによって、陽子のエネルギーは静止エネルギー(0.938 GeV)の約7400倍、7 TeVになります(講義を聴いた人はわかりますね?)。LHCについてより詳細に知りたい人は、
こちらのPDFファイルを参考に(素粒子物理学についての優れた解説です)。
日本からLHCに参加しているアトラス実験のブログ
本日配布した論文のアブストラクトページ
超光速運動を解説した日本語ウェブページ
第8回(2009/12/07)
固有時間、四元ベクトル、四元運動量、速度の変換則、相対論的ドップラー効果
第9回(2009/12/14)
慣性系、一般相対原理、一般相対性理論、ブラックホール、シュワルツシルドメトリック。
落下塔による微小重力実験の動画は、
日本無重量総合研究所(MGLAB)のページ
にあるものを使わせて頂きました。MGLABさんに感謝します。
放物線飛行(パラボリックフライト)による「無重力(微小重力)状態」について、
JAXAの解説ページ、
そのサービスを提供しているDiamond Air Service社のページ
"Parabolic Flight"に関連してYouTubeに
面白い映像を見つけました。他にも、YouTubeにParabolic Flightの映像がたくさんあって面白いです。
第10回(2009/12/21)
一般相対性理論の応用としてのGPS。プランク時間、プランク長、プランク密度。
講義で紹介した、IPMUからのプレスリリース(量子重力理論について)。
12月24日 宇宙科学研究本部見学会
見学会を開催しました。参加した皆様、お疲れ様でした。
普通の見学コース(展示室、ロケット見学)の他に、金星探査機Planet-C製作中のクリーンルーム、すざく衛星運用の様子等を案内しました。通常の見学コース(「はやぶさ」の実物大模型などあり)は平日、週末ともに開放していますので、興味のある方はぜひいらしてください。
宇宙研へのアクセス
第11回(2010/01/07)
二体問題、 重力波、ケプラーの第一、第二、第三法則
oハンドアウト:円錐曲線(楕円、放物線、双曲線)、楕円の説明
第12回(2010/01/18)
人工衛星の軌道、軌道六要素、Two Line Elements、コンパクト星(ブラックホール、中性子星)の光度の見積もり。
ハンドアウト:
人工衛星の軌道六要素の説明(「人工衛星の力学と制御ハンドブック」より)
ぎんが衛星の軌道六要素の時間変化
軌道六要素とTLE (Two Line Elements)の定義
講義で紹介した、JAXAの人工衛星軌道情報提供サービス
NASAのJ-TRACK 3D
NORADによるいろいろな衛星の最新のTLE
第13回(2010/01/25)
黒体輻射、中性子星の表面の温度、ブラックホールの周りの降着円盤の温度、ブラックホールのパラメーター
参考書
-
「ブラックホールと高エネルギー現象」
シリーズ現代の天文学 8,日本評論社,
ISBN-13: 978-4535607286
- 「X線天文で学ぶ物理の世界」 (CD-ROM),丸善,
製作・著作:
文部科学省大学共同利用機関 メディア教育開発センター
https://www.nime.ac.jp
問い合わせ先:
財団法人 放送大学教育振興会
https://www.ua-book.or.jp
- "Classical Mechanics", Goldstein, second edition, ISBN 0-201-02969-3
座標変換、オイラー角、四元数に関する議論。日本語訳も出ていますが、版は古いかもしれない。
- 「ハミルトンと 四元数」, 堀源一郎, ISBN 978-4-87525-243-6
かなりマニアックな四元数についての専門書。これを通読する(できる)人はいったい何人いるのだろうか?
ハミルトンの紹介と四元数の発見に関する歴史的記述がおもしろいけど。
- "Classical Electrodynamics", Jackson, 第1版。
アメリカで標準的に使われている、大学院レベルの電磁気学の教科書。第1版は日本語訳も出ています。
特殊相対性理論の議論を参考にしました。それに関しては、第2版よりも第1版のほうが、(厳密さには
欠けるが)簡単でわかりやすいと思いました。
- "Exploring Black Holes", Taylor and Wheeler, ISBN 0-201-38423-X
相対性理論のわかりやすい教科書。GPSについては、これを参考にしました。
- 「人工衛星の力学と制御ハンドブック--基礎理論から応用技術まで」, 培風館, ISBN-10 4563067563
タイトルどおりの、高価な専門書です。人工衛星の姿勢、四元数についての詳しい記述があります。
本講義の内容を理解していれば、大学一年生でも、このような専門書を読めるはずです。
- 「基礎物理コース 力学」、喜多秀次他著、学術図書出版社, ISBN 4-87361-042-7
私の京都大学1年生(1980年度!)の時の教科書です。隅から隅まで
読んで、演習問題も全部解きました。ごく普通の力学の教科書ですが、名著だと思います。一生手放せませんねえ。
幸い、まだ出版されているようです。二体問題について参考にしました。
- "Data Reduction and Error Analysis for the Physical Sciences", Bevington and Robinson,
ISBN 0-07-911243-9
統計についての議論はこれを参考にしました。かなり古いですが、古典です。第一版の赤い本が、短くて読みやすかったです。たぶん、物理実験系の
どこの研究室の本棚にも転がってるんじゃないかな?