「はるか」が結ぶネットワーク
VSOP,夢がかなった!(ヨーロッパからの見方)
VLBIの歴史は,人類の宇宙の歴史と比べると10年若い。最初のVLBIの実験は1967年に行われ,一方,最初の人工衛星は1957年でした。VIBIの天文学者はVLBI実験成功の最初の日から,干渉計の基線を宇宙へ伸ばすことを夢見ていました。なぜでしょう? 望遠鏡の分解能は,波長が与えられると,その大きさに反比例します。干渉計の場合,”大きさ”はその基線長に当たります。最初のVLBI観測では電波天体の大きさはとても小さくて,大陸間の基線でもその最も高エネルギーの天体の構造を見るには十分でありませんでした。欧州のVLBI観測者は,1980年代の初期から中盤にかけて,いろいろなスペースVLBI計画のデザインの研究を行いました。VSOPが最初のスペースVLBI衛星になると分かりだしたころ(1993年頃),欧州VLBIネットワークは,最大50%までの観測時間をスペースVLBIの観測にあてることを決めました。
欧州VLBIネットワーク(EVN)は,10ヶ国にある16の電波望遠鏡から構成されます(実際は,欧州だけでなく2つの中国の天文台,上海とウルムチもメンバーです)。ほとんどのEVNの電波望遠鏡は,それぞれ年間3〜4週間の,EVN/広域観測セッションの時間をVSOPの公募観測にあてています。データはマーク4型もしくはVLBA型のデータレコーダで記録され,NRAOのソコロにあるVLBA相関器に送られます。更に,いくつかの欧州の電波望遠鏡はVSOPのサーベイ観測プログラムに参加しており,S2型の記録装置で観測され,ペンティクトン(カナダ)のS2相関器もしくは三鷹の相関器により相関処理されています。
多くの欧州の天文学者がVSOP観測の観測提案者になっています。この特集号でもいろいろな観測結果が紹介されていますが,先日のEVNでのシンポジウムでも,いくつかのVSOPの結果が紹介されました。その結果については,New Astronomy Review誌から出版されます。宇宙にVLBI基線を伸ばすという夢は,現在,毎日実現しています。そして,最近のVSOPの結果は,VSOPがまだ最初の第1ステップの段階で,VSOP-2や,ARISEのような次の世代のスペースVLBIが必要であることを示しています。
最後に,この「VSOP」という名前は欧州の人々に特別な意味を持っています。なぜか? まず,この名前は,非常に印象に残る名前でヨーロッパ風(特にフランス風)であります。VSOPのゴッドファーザーである,森本さん,平林さんをはじめとする皆さんは,なぜこの名前に賛成したのでしょうか? 私は,2年半もの間,VSOPの運用のための電話会議に参加してきました。この電話会議は,日本や豪州では,朝に始まります。そのとき,米国では,午後遅くで,ヨーロッパでは,0時から午前3時です!! これは,すてきな夢をみるにはちょっと具合の悪い時間です。
(ヨーロッパVLBI共同研究所・L.I.Gurvits )訳:村田泰宏