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宇宙科学の最前線

微小小惑星の質量を求める

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 2005年9月12日,打ち上げられてから2年4ヶ月を経て,小惑星探査機「はやぶさ」が目的地である小惑星イトカワに到着した。到着したときの位置は,イトカワからの距離約20km。広大な宇宙のスケールから見れば,まさにピンポイントの到着である。その後,約3ヶ月間にわたって,「はやぶさ」はイトカワの周りを飛行し,まさにその名の通り,“獲物”の獲得のため,イトカワへの接近を繰り返したのである。差し渡し540mの小さな天体の周りを探査機が自由に飛行するミッションは,もちろん世界で初めてである。ここでは,この世界初の試みに関連して,「はやぶさ」の軌道とイトカワの質量推定について紹介する。


イトカワ周辺での「はやぶさ」の軌道

図1
図1 「はやぶさ」とイトカワ,地球,太陽の位置関係
図は小湊隆氏による。


 「はやぶさ」とイトカワ,そして地球・太陽の位置関係は,図1のようになる。「はやぶさ」は常にイトカワと地球を結ぶ線の近くにあり,地球と太陽は,「はやぶさ」から見るとイトカワと反対の方向にある。「はやぶさ」は,イトカワを周回することはせずに,基本的には上下方向に運動した。ただし,単純な上下運動だけでなく,視線と垂直方向への飛行も行っている。到着から10月下旬までの実際の軌道図を描いたものが図2である。9月中はほぼ直線に沿った運動をしていたが,10月になると横方向にも飛行したことが分かる。

図2
図2  2005年9月12日から10月下旬までの「はやぶさ」の動き
原点にイトカワがあり,Z軸の正の方向に地球がある座標系である。
図は小湊隆氏による。


 図1にあるように,ミッションチームでは,イトカワから20km付近をゲートポジション,7km付近をホームポジションと呼ぶことにした。イトカワに到着した9月12日は,ゲートポジションへの到着である。その後,2週間ほどはゲートポジション付近にいたが,9月末には高度をホームポジションまで下げた。さらに10月後半には高度を4km以下まで下げている。まったく初めての経験であるので,いきなり高度を下げることはせずに,慎重に運用を行っていったのである。


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