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観測ロケットS-310-36号機打ち上がる


 宇宙空間におけるアレイ・アンテナの構成実験を主目的とした観測ロケットS-310-36号機は,1月22日午後1時ちょうどに,内之浦宇宙空間観測所のKS台地から打ち上げられました。ロケットの飛翔および搭載実験機器の動作はすべて正常でした。ヨーヨー展開,ノーズコーン開頭,頭胴部分離,実験装置部のホイールによる姿勢安定,とシーケンスが進み,親機・子機の分離およびそれに続く網展開が,Kuテレメータを通じて地球を背景にした美しい映像で確認されたときには,みんな大喜びでした。アクティブ・フェイズド・アレイ・アンテナ実験も良好なデータが取得され,宇宙においてアレイ・アンテナが構成されたことが確認されました。また,網上移動実験装置の動作も確認されました。実験の様子は,親機・子機の運動に関する膨大な数値データとともに,画像としても見ることができました。小型観測ロケットに手作りのKu帯送信機を搭載して動画を電送できたことも,今号機の成果を支えるものでした。

 本実験の成果により,宇宙空間におけるアレイ・アンテナの利用,複数衛星の相互ダイナミクスの理解,柔軟展開構造物の構築,大面積太陽電池アレイの構築などの研究と実用化が,いっそう加速されることになると考えています。

 この搭載実験は,神戸大学賀谷研究室と東京大学中須賀研究室との密接な連携で実施できたもので,多くの学部生・大学院生がPI(搭載実験装置部)の当事者として刻苦精励した結果が大きな喜びとなって返ってきました。実験班編成が総勢114名という規模も,S-310の実験としては画期的だったと思います。観測ロケットの工学実験利用においても,今後を占う大切な実験だったと思います。

 当初の計画では1月18日の打上げ予定でしたが,あいにくこの日から天候が悪化し,結果として4日間も雨が降り続きました。1月にこのように雨が続くことはないと,内之浦の人たちが話していました。ちょうど関東地方が一面の銀世界と化していたころ,実験班は予想外に降り続く雨に恨めしく天を見上げていました。何種類もの天気予報はみんな少しずつ異なりましたが,実験場のある山の上の天候についてはどれも当たりませんでした。5日目の正直,ようやく22日になって朝から快晴となり,S-310-36号機は,美しい飛跡とともに南西の空に消えていきました(表紙写真)。

 まず,観測ロケット打上げにご協力いただいた漁業者の方々をはじめとする関係各位に,心より感謝を申し上げます。また,ASTRO-F/M-V-8の準備作業や衛星地上系運用との干渉などを通じた長期にわたるご支援とご理解に,実験班員一同よりお礼申し上げます。さらに,着実な打上げに向けて大きな盛り上がりを見せた実験班員全員に,この場を借りて謝意を表します。


(樋口 健) 


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