宇宙には真空という状態はあり得ません。銀河の中で今まで何もないと思われていたところ,銀河と銀河の間,銀河団の周り,さらには銀河団の外側にもきっとガスが広がっているはずです。そういうガスの中でも,なぜその場所にあるのかよく分からなかったり,どうやって熱くなったのか分からない高温の“妙なガス”を調べています。
何回もブラジルに行きましたが,最後に行ったとき,当時あまり観測されていなかったエネルギーの極めて高いX線の検出器を上げました。しかし観測角度を変える装置が故障して,予定した観測ができなくなりました。仕方がないので,銀河面でも見ようかと,観測を続けました。すると何かがぼーっと光っていたのです。X線天文学の専門家に聞いたら「その場所にそんな放射はあるはずがない」と言われました。でも,あるのです。自分で作った検出器なので確信が持てました。何か妙なガスが光っていたのです。そのときから私は“妙なガス系”の研究者になってしまいました(笑)。その後,X線天文衛星「あすか」を使った銀河団の高温ガスの研究などを行ってきました。