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SOLAR-Bプロトモデル試験速報

 2005年夏に打ち上げを予定しているSOLAR-B衛星のプロトモデル電気試験が,7月16日より9月13日までの2ヶ月間C棟の衛星クリーンルーム及びチェックアウト室で行われた。SOLAR-Bは,現在なお活躍中の「ようこう」(SOLAR-A)衛星が観測した太陽コロナのダイナミックな世界に注目しつつ,可視光での太陽光球面の超高分解能・精密磁場観測と極端紫外線での分光撮像という新しい手段を追加して,光球面とコロナを一体のシステムとして捉え,電磁プラズマ現象の素過程や高温コロナの成因の解明を目指す。

 PM試験には日・米・英国が協力して製作するつの観測装置(望遠鏡)の電気部と,観測制御及び膨大な画像データを処理するミッション・データ・プロセッサ(MDP),衛星データ処理装置(DHU)などが参加した。装置間の電気的インタフェース,観測制御インタフェース,テレメトリインタフェースなど多岐にわたって試験が行われ,電気部の設計妥当性を確認した。試験中には様々な不具合や予想外の現象が発生し,原因究明に時間を要したが,改修を要する箇所が明確となり,これらはフライトモデル設計に反映される。

 このPM試験には,衛星システム担当メーカの三菱電機をはじめ日本国内の機器担当メーカや研究機関の関係者が多数参加した。また,米国からは可視光磁場望遠鏡の焦点面検出器担当のロッキード研究所,X線望遠鏡の鏡筒部担当のスミソニアン天文台,英国からは極端紫外線撮像分光装置担当のマラード宇宙科学研究所の科学者・技術者が参加した。

(国立天文台 清水 敏文) 


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ATREX-12エンジンシステム地上燃焼試験について

 能代ロケット実験場において,8月21日〜9月5日に,ATREXエンジンの地上燃焼試験が行われました。このエンジンは,プリクーラと呼ばれる液体水素を冷媒とした熱交換器で取り込んだ空気を予冷却している点が特長で,世界的にも類を見ません。今回の試験では,空気中の水分がプリクーラの冷却管表面で氷結するアイシング現象を解決することを目的としました。凝縮性物質であるメタノールを噴霧するタイプの着霜軽減装置が考案され,試験されました。

 1回目の試験でメタノールの着霜低減効果を確認した後,2回目の試験では噴射量とシーケンスを改善しました。エンジン着火から約30秒,ビデオカメラに写る冷却管表面の着霜もなくなり,試験は大成功と思った矢先,ベアリングの故障で試験は中断されました。幸い,2回の試験によって,メタノール噴射装置の効果と問題点が把握できました。

 このセラミックス製のベアリングは優れ物で,無冷却,無潤滑で,これまでの11年間56回の燃焼試験にわたって働き続けました。その間には,プリクーラによる零下100℃以下の環境や液体酸素の噴霧等,航空機のエンジンでは体験できないような厳しい試練に耐えてきました。次回はベアリングを交換して試験を行いますが,飛翔試験に向けた新しいエンジンの開発も並行して進めていく予定です。

(佐藤 哲也) 


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2001年度第2次大気球実験

 2001年度第2次大気球実験は,2001年8月21日から9月8日まで三陸大気球観測所において実施されました。放球した気球は,BT5-22B80-6B30-69B50-22BT'30-1の計5機でした。

 BT5-22号機は,成層圏のオゾン高度分布を観測することを目的として行われ,高度20kmから42kmまでのオゾン濃度の観測に成功しました。

 B80-6号機は,太陽フレアに伴って放射される硬線スペクトルを観測することを目的に行われました。検出器は新規開発されたテルル化カドミウムが用いられました。飛翔中大きなフレアは発生しませんでしたが,16台の検出器は放射冷却により-10℃以下に冷却され全て良好に動作し飛翔性能確認が行われ,所期の目的を果たすことができました。

 B30-69号機は,成層圏における極限環境微生物の採集を目的として行われました。採集方法は大気を吸引し,その中に含まれる微生物等をフィルタに吸着する方式で,回収後フィルタに付いた微生物の培養を行い,微生物の単離及び同定を行うものです。高度12kmから31km間で4時間にわたる採集が行われました。

 B50-22号機は,エネルギー100GeV以上の電子観測を目的に行われました。飛翔中,観測器は全て正常に動作し100GeV以上の電子観測に成功しました。この観測データは,来年度予定されている南極周回気球による長時間観測のための基礎データとなるものです。

 BT'30-1号機は,宇宙研が開発した厚さ3.4ミクロンのポリエチレンフィルムで製作した容積30,000m3の超薄膜型高高度気球の飛翔性能試験を目的に行われました。気球は正常に上昇し,予定高度50.7kmに到達しました。本気球は従来の同容積の高高度気球の6割程度の自重であり,大幅な軽量化に成功しました。今回到達した高度50.7kmは,日本で放球した気球の最高高度です。

(山上 隆正) 


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S-310改モータ地上燃焼試験

 2001年9月4日S-310改モータの地上燃焼試験が,愛知県の(株)アイ・エイチ・アイ・エアロスペース武豊事務所ロケット実験場にて実施されました。今回の改良型モータでは,推進薬及び燃焼室断熱材の材料について世代交代が図られると共に,点火の方式に新技術が導入されています。また新しい推進薬を用いることに伴い,推進薬の内面形状も新たに設計されています。さらにノズル絞り部(スロート)の黒鉛製部材に関しては,信頼性を向上させるための設計が施された上で,この材料に相応しい非破壊検査技術が研究され,徹底したチェックが行われています。当日の天候は晴れ,気温25度の良好な環境のもと,午前11時40分に点火され,着火・燃焼ともに正常で,データ取得状況は良好でした。詳細な評価を現在実施中ですが,着火特性,燃焼特性,耐・断熱材の焼失・焼損特性等について貴重なデータが得られたと考えています。今後この試験の結果を基に飛翔型モータの仕様を確定させ,第30号機でデビューさせる計画です。

(嶋田 徹) 


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用語解説
「すだれ」コリメータ

フーリエ合成型「すだれ」コリメータ


磁気再結合現象
「ようこう」10周年記念の記者会見

 太陽観測衛星「ようこう」は2001年8月30日,打上げ10周年を迎えた。太陽の活動は約11年周期で変動している。第22周期のピーク直後に打上げられた「ようこう」は,いま第23期のピークの観測を終えつつあり,1周期を連続観測した世界で初のX線太陽観測衛星となった。これを契機として「ようこう」の画期的な成果の積極的な広報をめざして,9月10日に記者会見を行い,最新の画像数枚を公開した。

 浜松町のNASDA iで行われた記者会見には約10の新聞(通信)社が参加。的川教授の司会のもとで,米・英の仲間からのメッセージ・ビデオが紹介された後,小杉が「ようこう」10年間の成果を,概略,以下のように要約して紹介した。

 「ようこう」には『世界で初めて』と誇れることがいくつもある。軟X線望遠鏡は世界初の衛星搭載CCDカメラであり,コンピュータを用いた自動撮像制御が自慢である。硬X線望遠鏡はフーリエ合成型の「すだれ」コリメータで,30keV以上の高エネルギー域でのX線撮像観測を初めて実現した。10年間もの長期にわたってX線で太陽を連続的に観測したのも世界で初めて。これらを武器に「ようこう」は,躍動する太陽コロナを鮮明に捉えて太陽コロナの描像を一新するとともに,太陽フレア等の爆発が磁気再結合現象によることを確証した。また膨大なデータの蓄積により宇宙天気予報の実用化に道をひらく重要な成果をも得た。これらの科学成果は1000編を超す論文にまとめられている。

 記者会見には,小川原名誉教授(名誉衛星主任),NASAの宇宙研駐在員であるHugh Hudson氏も出席した。この記者会見の結果,『朝日新聞』その他の新聞にカラー写真付きの記事が掲載された。いささかなりとも宇宙科学の広報に寄与でき,苦労をした甲斐があったと考えている。

 なお,この記者会見は,米国NASA,英国PPARCと共同で企画したもので,同日ワシントンとロンドンでも記者発表が行われた。共同記者会見で弾みをつけて,9月17日からの「ようこう」10周年記念国際会議の開催地ハワイに乗り込もうとしていたのに,こちらは同時多発テロの発生で延期を余儀なくされてしまった。残念なことであった。

(小杉 健郎) 


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READ実験について

 READ(Reentry Environment of Advanced Diagnostics)実験は,無人宇宙実験システム研究開発機構(USEF)が開発中のUSRES(Unmanned Space Experiment Recovery System)衛星に搭載予定の実験で,USEFとの共同研究として進めているものです。

 USERS衛星は,2002年度夏期H-IIAロケットによって打ち上げられ,約半年間地球低軌道上で微少重力関連の実験機器を用いた実験を行ったのち,軌道上に残る機体部分から分離された回収機体が,大気再突入を経て,海上回収が行われる予定です。

 USERSのミッションは複数のものからなりますが,メインミッションは微小重力環境を利用した高温超電導材料の製造実験です。READ実験そのものは,大気に再突入する際に機体の周りに生じる高温大気からの発光を分光測定し,飛行環境に関する知見を得ることを目的としており,回収機体部分に搭載されます。取得される分光データから,機体周りに生じる高温大気の温度,成分など再突入時の飛行環境に関する貴重なデータが得られることが期待されています。単体の開発は既に終わっており,現在,回収機体に組み込まれた状態で,回収機体ともどもシステム試験が行われ,続いて大型スペースチャンバーでの熱真空試験が進められています。宇宙研の大型スペースチャンバーは,ユーザも多く,試験期間の設定の際には,多大のご迷惑をおかけしましたが,今後も,関係各位のご協力をお願いする次第です。

(安部 隆士) 


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用語解説
フライバイ
BepiColombo Science Workshop

 2009年の打ち上げを目指して現在理学委員会にミッション提案を行っているBepiColombo国際共同水星探査計画(以下BepiColombo計画と省略)の初のScience Workshopが海外からの参加21名を含む93名の参加者で9月17〜18日の両日に渡り開催されました。BepiColombo計画はいままで飛翔体を用いた直接観測としては1970年代の米国のMariner10によるフライバイ時の観測があるだけであり,望遠鏡による観測も太陽に近いためにその制限がきびしい水星に2機の周回機と1機の着陸機の計3機の観測機を送り込み地球型惑星としては最も未知の惑星である水星について詳細に調べようという大変野心的な計画です。今回のWorkshopでは日本が担当することを期待されている磁気圏探査衛星MMO(Mercury Magnetosphric Orbiter)での科学観測を中心に搭載機器に関して議論がかわされました。初日はシステム検討の現状や水星に関する観測の意義等について。日目の午前は関連観測器毎に分かれて開発・分担の方法等について。午後は現状のMMOのモデル搭載機器の検討状況についての議論がありました。一部の観測器では初日の晩のパーティー後に既に観測器についてのミーティングを始めるなど友好的な雰囲気の中にも白熱した議論がなされました。今後は,年に一回程度の頻度で日欧の研究者を集めたScience Workshopを開催していく予定です。

(早川 基) 


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ESAのメンバの来所

 ESA(欧州宇宙機関)のメンバー12人を迎えて,日ESA行政官会合が9月18,19日に東京で行われました。この会合は,1972年に締結した交換公文に基づき東京とパリで交互に毎年1回開催されているもので,議長は文部科学省研究開発局長とESA長官が交代で務めます。主な議題は日本とESAの間の協力プロジェクトに関する情報交換です。

 宇宙科学は,ESAとの間に実質的には多くの協力ミッションがありますが,日ESA行政官会合の中心的な議題にはなっていませんでした。今回は,東京での会合が終わった後,9月21日ESAの一行の中から6人が文部科学省調査国際室やNASDAの方々とともに宇宙研を訪れ,宇宙科学に特化した情報交換を行いました。団長のJean-Pol Poncelet氏は,ESAの企画・対外局の局長の職にあり,ベルギーの物理学の研究者出身で,副首相を経験した方です。

 宇宙研の松尾所長の挨拶に始まり,松本企画調整主幹と向井太陽プラズマ系研究系主幹による宇宙研の活動の紹介の後,所内施設の見学を行いました。ESAとの間には,赤外天文(ASTRO-F),水星探査計画(BepiColombo),太陽観測(SOLAR-B)など多彩な協力が予定され,今後もますます付き合いが深くなります。今回の来訪メンバーは,宇宙科学分野には予備知識があまり無かった様子で,宇宙研が限られたリソースで多くの成果をあげているのに,文字通り驚いている様子が印象的でした。

(中谷 一郎) 


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M34-3TVC 地上燃焼試験

 一連のM-V型ロケット各段モータのスロート材変更に関連する地上燃焼試験のつとして,M-34-3TVC モータの真空燃焼試験が能代試験場で実施されました。試験は,9月22日の午前10:30点火で行われ,後方着火点火器が,点火直後に「見事な」飛行軌跡を残して飛び去ると,M-V型ロケットでは最も長秒時の100秒間にわたる燃焼が,まだかまだかの緊張のうちにも順調に進行して,無事成功裏に終わりました。主目的であった,3次元C/C材料によるノズルスロート部の機能と健全性が確認できました。あまりに燃焼後の状態が良かったため,再使用も可能ではないかとの声も聞こえるほどで,関係者も満足いただけたようです。当日は3連休の初日ということもあり,能代市の宇宙科学体験教室という企画も行われました。国中助教授による講演と,堀助教授の解説つきの燃焼試験見学,さらには試験終了後の試験スタンドの見学という,うまい企画で,参加された親子連れの方々にも満足いただいたと思います。残る大物は,12月第1段M-14モータですが,今回までで,上段ステージについては,スロート材変更の燃焼試験は完了したといえるでしょう。

(川口 淳一郎) 


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