No.226
2000.1

<送る言葉>   ISASニュース 2000.1 No.226

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西田所長を送る

鶴 田 浩 一 郎  

 4年前に西田先生が所長におなりになると決まった時にまず頭に浮かんだことは,不謹慎にも「これは大変なことになった」という考えでした。「あけぼの」や「GEOTAIL」衛星を抱え,「のぞみ」の開発のさなかで,太陽系プラズマ研究系としては所全体のことを考える前に研究系の明日のお米をどうしようかということの方がよほど大切に思えていました。父親を送り出す子供の我侭みたいなものですが,今振り返ってみるとこれとは別に,その後経験することになった大きな嵐の予感みたいなものもあったような気がします。

 西田所長は我々の分野では国際的に評価の高い研究者で,これまで数多くの研究上の業績を上げてこられました。宇宙研の我々のみならず多くの後輩どもが指導者として尊敬してきました。所長になられてからも予想どおり研究面の活動を続けられ,時折,キツーイ苦情を賜って我々を右往左往させられたことが何度かありました。然し,このあたりは,予測された範囲のことであまり驚くこともありませんでしたし,我々も望んでいたことでありました。

 私が,本当に驚いたのは所長になられてしばらくして始まった宇宙研をめぐる政治的な状況の急変の中で西田所長が発揮された指導性でした。学術審議会によるミッション評価に始まり,行政改革に伴う文部省と科技庁の合併,独立行政法人化の動きと矢継ぎ早に降りかかってくる難題にすばやく的確に対応してこられた「政治的」手腕は以前には知らなかった西田先生の側面でした。「行革タスクフォース」もその一つですが慣れない政治的な問題に無い知恵を絞らされたことももう少し年月が経ってみるときっと良い思い出になるだろうと思います。

 研究者として一流の業績を挙げてこられた西田所長の根底に,宇宙研は国際的に一流の科学を進める研究所であるべきだというお考えがあるのだと考えます。残念ながら,政治的な嵐は今しばらく続きそうです。宇宙研がこの嵐の中で鍛えられ次の大きな飛躍に向け歩み始めることが西田所長の望んでおられることだと考えます。所長をおやめになった後も高い立場から日本の宇宙科学をより質の高いものへ発展させるべくご指導願いたいと考えます。

(つるだ・こういちろう)



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