No.226
2000.1

<送る言葉>   ISASニュース 2000.1 No.226

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鬼軍曹? 五徳の士?

上 杉 邦 憲  

 「西田先生いらっしゃいますか?」「私ですが。」これが私と西田先生との最初の会話でした。OPEN-Jなる計画の工学側を担当することになり,駒場45号館階の西田先生の部屋を訪ねた時のことです。それまで理学の先生といえば,OHO御三家しか存じ上げなかったので,黒髪豊かで私より若く見える方(別に黒髪に恨みがある訳ではありません。念のため)が磁気圏やらプラズマやらの研究で名高いあの西田先生とは信じられなかったのです。

 OPEN-Jがその後,日米協力によるGEOTAIL計画へと進化し,1992年7月無事フロリダから飛び立つまで,日米間には御多分に漏れず色々な問題が生じました。それにも拘わらずあまり苦労をした覚えが無いのは(決してボケて忘れた為ではありません。念のため),西田先生の卓抜なる指導力,決断力と国際性豊かな交渉力に面倒な問題は全てお任せしてしまったからでありました。技術的な問題は我々で何とかしましたが,例えばサイエンス・データの取り扱いや優先権等に関し,あくまで日本の不利にならないよう西田先生は常に堂々とNASAと渡り合われました。そのため,当時NASAで西田先生はSessue・Hayakawa(早川雪洲)の渾名で呼ばれていました。映画「戦場にかける橋」で彼が演じた日本軍の鬼軍曹に似てると言うわけです。ま,あの目でギョロッと睨まれると,大方のアメリカ人も「蒟蒻の木登り」(震え上がる:故大林先生作)だったと言うことでしょう。但しそれは決して悪口ではなく,対等に議論出来る相手として畏敬の念を込めたものとのことでした。

 その証左として,先生がいかに国際レベルで尊敬されていたかをESAのボネ氏が先日の沖縄でのIACGの際に的確な言葉で表現されました。曰く「西田先生に五つの徳あり:真面目,親切,指導力,率直,受容力」。これ以上付け足す言葉はありませんが,行革・独法化等を初め様々な火種を抱えた宇宙研火鉢をこれまで締めて来られた五徳・西田所長に「巡査の引越し」(官服(感服)の他は無い:故大林先生作)と申し上げ,お別れの言葉と致します。

(うえすぎ・くにのり)



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