宇宙科学談話会

ISAS Space Science Colloquium & Space Science Seminar

日本語

放射線は、何故、健康に影響を及ぼすのか

谷田貝 文夫(Fumio YATAGAI)
理化学研究所

放射線のエネルギーがDNAに吸収されると、DNAに化学変化が起きる。この化学変化をDNA損傷という。どのようなDNA損傷が生成されるのか、放射線に特有なDNA損傷はあるのかといった話から始める。細胞は非常に多くのDNA損傷を修復することができ、修復に失敗すると、突然変異や細胞死を誘導し組織や器官に障害をもたらしたり、がんに繋がる。細胞の中では、DNA損傷に対する修復だけが起こるのではなく、分子レベルで様々な応答(細胞応答)が誘導され、放射線障害を起こさないように身体を守る仕組みが働く。また、DNA損傷をもったままの細胞(がん細胞)には、自ら死を選ぶアポトーシスやリンパ球などによる駆逐(免疫)などの仕組みも働く。ここでは、これらの仕組みの基礎を分かりやすく説明することを主な目的とし、もし時間が許せば、微小重力環境での宇宙放射線被ばくの問題にも触れたい。

Place: 2F Conf. room(1236) / 研究管理棟2階会議場(1236号室)