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トピックス

2009年度第一次気球実験の実施について

【実験期間】5月18日(月)〜6月8日(月)
      ※天候や気流の状況により、6月20日まで延期される場合があります。
【実験場所】大樹航空宇宙実験場(北海道大樹町)

B09-01 無重力実験システムの動作確認(4号機)

無重力状態での物理現象は、科学的に非常に興味ある対象ですが、地球上で無重力状態を実現するためには、実験装置を重力に従って自由落下させる必要があります。実験時間を長くするためには、高い高度から落下させる必要があり、我々は、大気球を使って高度約40kmから実験装置を落下させる方式を開発しました。
高々度では空気は非常に薄くなっていますが、速度が速くなると空気抵抗が無視できなくなり、完全な無重力状態でなくなってしまいます。そのため、無重力実験を行う部分を落下する機体の中で浮かせて、実験部が機体の内壁にぶつからないように機体を制御することにより、良質な無重力環境を実現します。今回は3回目の実験であり、重力のかかった状態では観測が難しい液体の“濡れ性”の本質に迫る実験を行います。

【使用気球】
 満膨張体積:300,000m3 直径:91.4m 搭載機器:370kg 観測担当:宇宙科学研究本部

B09-02 硬X線領域でのカニ星雲の偏光観測

カニ星雲は今から約千年前に大爆発を起こした天体ですが、現在中心には地球磁場の1億倍もの磁場をもった天体が1秒間に33回転しています。一方、爆発のショックで吹き飛ばされ宇宙空間を毎秒2000kmのスピードで膨張している外層にも磁場が存在しますが、これまでのX線領域での偏光観測では中心天体の回転軸と外層の磁場の向きが異なっているとの観測が報告されています。
本実験では、硬X線領域でのカニ星雲の偏光度と偏光方向を精度よく測定することで、過去の偏光観測と比較して、カニ星雲の磁場の状態を詳細に調べ、どうして莫大なエネルギーを放出しているのかの謎に迫ります。

【使用気球】
 満膨張体積:300,000m3 直径:91.4m 搭載機器:330kg 観測担当:山形大学

B09-03 気球搭載望遠鏡による金星大気観測

金星大気の濃い炭酸ガスによる温室効果は高温高圧な状態を作り出し、大気上層には硫酸の雲が層をなしています。過去には金星大気も現在の地球大気に似た状態で、水も存在したと考えられていますが、現在のような状態になった過程は謎です。温暖化が進む地球の未来を見定めるためにも、金星大気の進化過程の研究は重要性を増しています
金星の紫外・赤外画像から上層大気の循環場を導出し、大気ダイナミクスの視点から金星大気進化過程を探ります。極域成層圏からの惑星光学観測は、観測条件やコストの点で地上大型望遠鏡に匹敵する成果が期待できます。今回の実験では、気球搭載望遠鏡システムの性能と、金星大気上層雲の構造を確認することを目的としています。
【使用気球】
 満膨張体積:100,000m3 直径:63.4m 搭載機器:515kg 観測担当:立教大学

2009年5月22日

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