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宇宙科学の最前線

「ひので」衛星による太陽研究の進展 太陽系科学研究系 准教授 坂尾 太郎

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むすび

 「ひので」の打上げ以降、太陽活動は低調だったため、「ひので」からの成果は、太陽の静穏領域を対象にしたものなど、フレア以外が中心でした。しかし太陽活動が活発化しフレアの数も増えるにつれ、「ひので」によるフレアの観測例も増えてきました。どのような観測を行うと科学的に意味のある結果が得られるかといった、ノウハウの蓄積も進んでいます。フレアが引き続き活発に起きると期待される今後の3年間に、これまでのノウハウを活かした観測を行うことで、上述のトリガー機構をはじめ、フレアの理解が大きく進展することが期待されています。また、太陽極域の精密な磁場観測は、これまでにないまったく新しいデータをもたらすだけでなく、これを継続することで、極域の磁場反転がどのように進行するのかを捉えることができ、また将来、太陽の周期活動のメカニズムを理解するための貴重なデータとなることは間違いありません。

 「ひので」は現在、2011年度から3年間の、1回目の運用延長期間にありますが、来年度から3年間の運用延長をJAXA宇宙科学研究所の宇宙理学委員会に提案し、審査を受けています。今後数年間の観測によって、フレアや太陽の長期的な活動性をはじめ、まだまだ新しい発見が生まれるでしょう。これと並行して、「ひので」の成果をベースとした次期太陽観測衛星(SOLAR-C計画)の検討も進められています。

 最後に一言。「ひので」は科学的成果だけでなく(査読論文は、ほぼ3日に1編のペースで出版され続けています)、広報普及の面でも、日食の可視光やX線での画像をはじめ数多くの画像・題材を社会に提供しています。昨年6月に日本から見ることのできた金星の太陽面通過での、 SOTの鮮明な画像(図3)を目にした人も多いかと思います。次回の金星太陽面通過は2117年だそうです。今から100年後、「前回の金星太陽面通過の画像」として紹介されるのは、この「ひので」の画像でしょう。そのとき、この画像はどんな感想を持たれるでしょうか? できるだけ多くの「ひので」の成果が、100年後の研究界や社会に影響を与えていることを願いつつ、今後も「ひので」の観測運用を進めたいと考えています。

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図3 日本時間2012年6月6日に発生した金星の太陽面通過の「ひので」SOT画像


(さかお・たろう)



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