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宇宙科学の最前線

電気ロケット技術 Game Changing Technology 宇宙輸送工学研究系 教授 國中 均

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 「はやぶさ」の帰還に活気づけられて、「はやぶさ2」の開発が始まっている。「はやぶさ2」には、これまでの8mNから10mNへ推力向上したマイクロ波放電式イオンエンジンが投入される計画であり、2014年の打上げを目指す。宇宙輸送工学研究系では、イオンエンジンのみならず、図2に掲げるようにほかの電気ロケット技術、DCアークジェット、MPDアークジェット、ホールスラスタ、テフロンスラスタの研究開発を進めている。これらのラインナップで宇宙研究開発を先導していく。

図2
図2 各種電気ロケット


終わりに

 アカデミアは行政から「2番ではいけないか?」という命題を突き付けられた。研究開発コミュニティから外向きには、毅然と反論すべきだ。1番を狙ってこそ1番になれるかもしれないのであって、初めから2番狙いでは馬群に沈むのがせいぜいだ。一方、内向きには、自己を律する意味も含め、世界最先端を極め、その技術を完成させ、実証/実用までをなるべく短時間でこなして、社会福祉に貢献・還元することを目指すことを肝に銘じなくてはいけない。研究開発という自己陶酔に陥り、我田引水で独りよがりの目標を設定し、実現から逃避する方向で活動を進めることは絶対にあってはならない。これまでの宇宙開発は、押し付けがましいSEED型であって、ユーザーを鑑みたNEED型という概念が欠落していたと反省すべきと思う。

 日本は閉塞的社会風潮にさいなまれ、人口減少に転じ、国内総生産(GDP)は世界第3位に後退、国家的「後退局面」にあるとの指摘がある。さらに追い打ちを掛けるように大きな震災に見舞われた。この厭世感を払拭し、日本を元に戻し、さらに前進させなくてはならない。それには、従前概念にとらわれず、新機軸・発明的・刷新的新手法でしか未来は開けないと信ずる。「はやぶさ」がカプセルを送り届けるために、立ちはだかるいくつもの課題にひるむことなく立ち向かい、創意工夫を駆使して克服し、地球にたどり着いたように。Let's make Game-change.(既成の流れを変えよう)


(くになか・ひとし)



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