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宇宙科学の最前線

自然が織りなす光のショー惑星オーロラの魅力 Sarah V. Badman JAXAインターナショナルトップヤングフェロー 宇宙プラズマ研究系

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木星オーロラ

 太陽系のほかの惑星にもオーロラは見られ、それを研究することで惑星周辺の宇宙環境を知ることができます。太陽系最大の惑星である木星は、大変強い固有磁場を持ちます。そのため、その周囲にできる磁力線でできたカゴは大きなもの――地球から見れば、ちょうど太陽と同じ大きさ、距離は木星の方が5倍遠いにもかかわらず――になります。木星周辺の宇宙環境は、この強い磁場とともに、10時間という短い自転周期にも強く影響されます。この高エネルギー現象が生まれやすい環境に加えて、火山活動をする衛星イオがガスを宇宙空間へと噴き上げています。このガスが宇宙空間で何かを引き起こすであろうことを想像するのは、容易でしょう。実際、これらの要素が木星のメイン・オーヴァルと呼ばれるオーロラの生成に寄与しており、太陽風との相互作用が要因である地球の場合とは異なった世界が展開されています。

 イオは地球の月よりもやや大きな衛星で、木星の近くを周回します。イオは太陽系天体の中で最も火山活動が活発な天体であり、毎秒1トンものガス(酸素や硫黄など)を宇宙空間へと放散しています。宇宙空間を漂うこのガスはやがて電離しますが、そうすると磁力線を介して木星本体とつながることで、ガスも木星と同じように自転するようになります。この、イオからのガスに自転速度を獲得させる過程で、オーロラが生まれるのです。この意味において木星磁力線のカゴの中にあるイオこそが、カゴを外から揺さぶる太陽風ではなく、北極・南極の周囲を環状にめぐるメイン・オーヴァルのオーロラの主原因となっているのです。


ハッブル宇宙望遠鏡

 木星は巨大ガス惑星です。オーロラ電子は水素原子でできた大気へと突入します。このことは、太陽系で最も明るい木星オーロラ(地球の10倍の明るさ)は水素原子からの紫外線で光ることを意味します。人間の目は可視光域と呼ばれる、ある狭い波長範囲の光しか見ることができないので、紫外線のようなほかの波長域の観測は望遠鏡を用いて行います。最も有名で性能が良い望遠鏡の一つが、高度600kmの宇宙空間に浮かぶハッブル宇宙望遠鏡でしょう(図1)。複数の搭載機器を持つハッブルは、木星オーロラ観測に何度も供されてきました。

図1
図1 地球を周回するハッブル宇宙望遠鏡(写真提供:NASA)


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