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宇宙科学の最前線

GEOTAIL衛星で探るオーロラ発生の謎 名古屋大学 太陽地球環境研究所 研究員 宮下幸長

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サブストームのきっかけ

 サブストームは磁気圏尾部のどのような現象がきっかけで起こるのかについて、今まで多くの説が提唱されてきました。それぞれの説で、きっかけとなる現象の種類とそれが起こる場所、周囲への影響の伝わり方が異なります。どの説が正しいのか、ここ数十年もの間、研究が盛んに行われ、現在も激しい論争が続いています。ここでは、数ある中で最も有力視されている説の一つである「磁気再結合モデル」について説明します。

 サブストームが始まる前、磁気圏尾部にエネルギーがたまっていく間、磁気圏尾部の磁力線(磁力の働く向きを示した線)は図2上段のように極端に引き伸ばされ、南側と北側の磁力線が平行で向きが異なる反平行の状態になります。あるとき、何らかの物理過程(詳細は未解明)により、南北の反平行の磁力線がつなぎ替わって、磁力線の形状を大きく変えます。これが磁気再結合です(図2下段の1)。磁気再結合は、地球から太陽と反対側に地球半径(約6400km)の約20倍の距離だけ離れた領域(以下、X〜−20REと表します)で発生します(ちなみに月の軌道は、地球から地球半径の約60倍の距離だけ離れたところにあります)。

 磁気再結合が起きると、磁気圏尾部にたまっていたエネルギーが解放され、サブストームが引き起こされます。磁気再結合領域の地球と反対側には、プラズモイドと呼ばれるプラズマの塊が形成され、毎秒数百から数千kmもの高速で地球から遠くへ放出されます。プラズモイドは、磁気再結合によってつくられた南向きの磁場と解放されたエネルギーの一部を運び去ります。また、磁気再結合領域の地球側では、プラズモイドとは逆に、北向きの磁場を持った、地球に向かう速いプラズマの流れができます。これがX〜−10 REに到達すると、磁場双極子化と呼ばれる、引き伸ばされた状態の磁力線が元の形状に近づいていく現象が起きます(図2下段の2)。このとき、解放されたエネルギーの一部とともに粒子が地球の方に降り込んできて、激しいオーロラ活動が始まります。このように、磁気再結合モデルは、磁気再結合が発端となって一連のサブストーム現象が引き起こされるという説です。


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図2 サブストームのきっかけと考えられている磁気再結合によるモデル


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