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宇宙科学の最前線

全天X線監視装置MAXI 激動する宇宙が見え始めた ISS科学プロジェクト室 主任開発員 上野史郎

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 2009年8月31日、MAXIとして初のガンマ線バースト(に伴うX線放射)を検出しました(図5)。ガンマ線バーストは宇宙で知られている最も光度の明るい増光現象です。短いものは数秒以下、長いものでも数分しか継続しないため、X線バーストと同様、MAXIをもってしても見逃す可能性の高い観測対象です。MAXIでの検出確率を年2個程度と見積もっていますが、9月27日、早くも2個目のガンマ線バーストがMAXI視野内で起こり、検出に成功しました。MAXIの解析結果は、8月のバースト(GRB 090831A)については2件、9月(GRB 090926B)は1件を、ガンマ線バースト速報ネットワーク(GCN)に投稿しました。ガンマ線バーストのX線検出は放射モデルの解明に寄与します。MAXIによる検出は、GRB 090831Aの位置決定に大きく貢献しました。また、GRB 090926Bでは、ガンマ線バースト観測衛星Swiftによる自動検知の17秒も前から、偶然MAXIがX線を検出し始めていました(注:ガンマ線も出始めていたが自動検知までに時間遅れがあったようです)。常に全天を監視し続けるMAXIによって、科学的に貴重な瞬間を観測できるチャンスが生まれます。
 2009年10月24日にX線新星(ブラックホール候補天体)の出現をメーリングリストATEL(Astronomer's Telegram)で知ったMAXIチームは、すぐに蓄積データを調べました。X線新星(XTE J1752-223)が10月23日から25日にかけて明るくなる様子をMAXIがとらえていました。結果はすぐにATELに報告しました。X線新星は数日かけて明るくなり、その後数ヶ月かけて暗くなります。MAXIのスキャン周期(90分)に比べて十分長いために、MAXIで見逃さずに発見し監視できる重要な観測対象です。
 ほかに、パルサー(中性子星)の増光を2件(A0535+26、4U2206+54)、近接連星系(UX Ari)の巨大X線フレアを1件、国際学会と物理/天文学会で発表し、4U2206+54の増光はATELに投稿しました。このように早く(速く)、これまでより深く全天を見せられるのは初めての成果です。現在は目視で明るい増光天体だけを見つけていますが、間もなくノバサーチシステムが本格稼働し自動検知が始まります。


図5
図5 MAXI初のガンマ線バースト(GRB 090831A)の検出

おわりに

 新しい天体の出現を見逃さず正確な座標を迅速に報告できるよう、較正結果を取り込んでソフトウェアの整備を進めています。今後、露出時間と位置ずれの補正を施した全天画像を発表し、速報とデータの一般公開を始めます。最新情報はウェブページに掲載中です。
 ミッションリーダ松岡のもと、MAXIにはJAXA(松岡、川崎、上野、冨田、小浜、鈴木、足立、石川、板本、小林、片山、海老沢)、理化学研究所(三原、杉崎、中川、山本)、大阪大学(常深、木村)、東京工業大学(河合、森井、杉森)、青山学院大学(吉田、山岡、中平、高橋)、日本大学(根來、中島、三好、石渡、小澤)、京都大学(上田、磯部、江口、廣井)、宮崎大学(山内、大休寺)が参加しています。またMAXI運用は有人宇宙環境利用ミッション本部および協力会社とタッグを組んで実施しています。

(うえの・しろう)


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