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宇宙科学の最前線

衛星構造の高精度化

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 衛星のミッション要求は、とどまるところを知りません。その中で、観測に使われるアンテナや望遠鏡の口径を大きくしたいのは、観測屋さんの共通の望み。アンテナの口径が大きければ大きいほど分解能、感度において有利であり、アンテナ直径を大きくすることの効果はほかの手法では代替できません。しかし、アンテナを大きくしても形状誤差が大きくては困るわけで、アンテナの鏡面精度要求が観測屋から構造屋に突き付けられます(被害者意識過剰ですが)。

大きなアンテナを使う衛星の場合

 許容できる鏡面の誤差(理論的なパラボラ面からの誤差)は、使われている観測波長の約1/20から1/50程度。技術試験衛星「きく8号」(ETS-VIII、2006年打上げ)の大型アンテナ(展開型メッシュ鏡面アンテナ)ではSバンド(周波数2〜4GHz、波長150〜75mm)を使っていたので、鏡面誤差は2乗平均値で2.4mm以下でした。17m×19mの展開アンテナなので、とてもきつい設計条件でした。その大型アンテナの技術を継承したASTRO-G(2012年度打上げ予定)のアンテナでは、1桁短い波長の周波数帯Kaバンド(周波数27〜40GHz、波長11.1〜7.5mm)を使うので、鏡面精度は「きく8号」より1桁小さい0.4mm以下を考えています。
 実際の鏡面精度の誤差は製造・組み立て誤差以外にもたくさんの要因がありますが、その中で大きいのが太陽光や地球赤外線・アルベドによって熱せられて生じる熱歪誤差です。宇宙での放射線環境によって劣化する材料の寸法変化(弾性率が変化することも考慮)もあります。


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図1 17m×19mのアンテナを持つ技術試験衛星「きく8号」(ETS-VIII)

図2
図2 口径9mのアンテナを持つASTRO-G


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