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宇宙科学の最前線

「ひので」で見えてきた太陽風の源

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太陽風の源の観測

 「ひので」XRTが観測した太陽コロナを図1に示します。左側の太陽全面像では、中心部に活動領域(黒点の上空など軟X線で明るいコロナの領域)が、その左にはコロナホール(軟X線で見たときにまるで穴が開いているように見えることから名付けられたコロナの暗い領域)が隣り合って見えます。右側の図は、XRTの観測領域をクローズアップしたものです。図中に示したように、活動領域とコロナホールがちょうど接したところから筋状の磁力線が上空へと伸び出しており、ここの磁力線に沿ってコロナガスが3日間の観測期間中、絶えず流れ出ていることが発見されました。図の白い円は、ガスの流出場所(筋状の磁力線の根元)を表しています。XRTによる温度診断から、ガスの温度は約110万度と求まりました。このような温度のガスの動きは、「ようこう」SXTではとらえることのできなかったものです。また、ガスの流れていくパターンから、投影面内(視線方向に垂直な面内)の速さは典型的に秒速140kmと分かりました。

図2

図1 XRTで見た太陽X線全面像(左)と、観測領域の拡大図(右) いずれも疑似カラー表示。右図の白円で示した場所から、コロナガスが筋状の磁力線に沿って絶えず上空へと流れ出ているのが発見された。

 ところで、この磁力線を伝わるものが流れ(ガスの一方向への運動)でなくて波(密度波)であっても、見掛け上、あたかもガスが流れているかのようなパターンが観測されてしまいます。しかし今回の場合、同時に観測していたEISの分光データによって、ガスの流出場所とその周辺のコロナガスの輝線スペクトルが、短波長側へドップラーシフトしていることが判明しました(図2)。このことは、ガスが我々の方向に向かってきていることを意味しており(秒速50km程度)、XRTとEISの観測を組み合わせることで、確かにガスが上昇運動をしていることが分かったのです。


図2

図2 コロナガス流出域のEISによる観測
鉄イオンの輝線の強度マップ(左)とドップラー速度マップ(右)。ガスの流出場所を右図中の矢印で示す。

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