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宇宙科学の最前線

多彩な科学観測ミッションに応える新たなアンテナ 過酷な環境下に耐える通信の要

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図4は同じ給電構造ですが、導波管部はquartz材を用いたハニカムコアでつくり、アンテナ素子には表面の金属膜に多数のスロットを切りアレー化して超軽量薄型化を図ったものです。金属膜には2000個以上の小さいスロットが刻まれています。現在、金星探査機PLANET-Cの搭載用として開発を進めています。厚さ約6mm、直径0.9mのアンテナ単体重量は約1kgで、まさにお菓子のウエハースのようです。これらのアンテナは、探査機搭載が実現すると世界初のお披露目になります。

図4
図4a エンジニアリングモデル 電波が反射しない電波無響室内でのパターン測定の様子
図4b 一部拡大した写真
銅箔面上に13列2226素子のスロット(アンテナ素子)が切られている。T字状の2素子がワンペアとなり円偏波をつくる。
図4c ハニカムコア構造

さらなる展開

 アンテナは電気回路ですが、ちょっと異質です。それは3次元空間の構造体でもあり、形が特性に大きくかかわります。このような観点から、新たな進展を見せる構造、材料系との連携も大いに期待されるところです。また、マイクロ波回路の最近の目覚ましい進歩を取り入れ、給電回路の小型軽量化、高信頼性、低損失化が実現されれば、給電振幅と位相制御によりビームの幅と方向を自在に変化できるアクティブ・フェイズド・アレーアンテナ(APAA)の搭載も夢ではありません。今後もプロジェクト固有の環境に適合したさまざまなアンテナが考えられます。アンテナは多様性があり、新たなプロジェクトごとに最適なアンテナ技術が誕生する可能性を秘めています。

(かまた・ゆきお)


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