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宇宙科学の最前線

割れても割れないセラミックス 繊維強化セラミックス,繊維強化炭素複合材料

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 一方、SiCなどの非酸化物セラミックスでは、SiC自身は1700℃まで安定ですが、界面層を構成する炭素や窒化ホウ素が酸化劣化します。つまり、酸素との反応により繊維―マトリックス界面にSiO2を主成分とする繊維およびマトリックスと強固に接合するガラス層ができ、界面層に必要な特性を満たせなくなります。この界面層の酸化劣化の問題や冷却技術の進歩による耐熱金属の使用可能温度範囲の拡大により、炭素より耐熱性に劣るSiC系の繊維強化セラミックスはほとんど実用化されておらず、一部の軍用ジェットエンジンの静止部品に適用されているにすぎません。しかし、SiC系複合材料で現在得られている1000時間程度の寿命は民間航空機用エンジンでは十分とはいえませんが、宇宙機用エンジンであれば成立する寿命です。
 そこで、JAXAでは最新の繊維強化セラミックスの設計、製造技術を用いて、世界的に実用化事例のない大型の繊維強化セラミックス製燃焼チャンバー(図4)の開発を進めています。新規材料である繊維強化セラミックスに最も足りないのは、使用実績がないことです。世界に例を見ない軽量な耐熱複合材料を用いた高性能ロケットエンジンを実現して、繊維強化セラミックスの用途拡大の突破口にしたいと考えています。いろいろと失敗を繰り返しており、道のりは平坦ではなさそうですけれど。

(ごとう・けん)


図4

図4 開発中のSiC/SiC製ロケットエンジン燃焼チャンバー


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