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宇宙科学の最前線

広大な宇宙に広がる小さな固体粒子を究める

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これからのダスト研究と宇宙からの観測

 以上のように,衛星冷却望遠鏡による赤外線の観測は,ダストの性質を知り,また新しい仲間を見つけ出すことに,非常に有効である。現在稼働中のSpitzer宇宙望遠鏡は,暗い天体の赤外線スペクトルを得ることが得意であり,それぞれのダストの詳細な研究が進むことが期待される。一方,我々のASTRO-Fは,広い波長範囲で宇宙空間の広い領域を観測することが得意であり,図1に見られるような宇宙空間でのさまざまなダストの存在量の変化をいろいろな環境下で調べて,ダストの生い立ち,成長,衰退の研究を大きく発展させるものと考えている。

 最後に,ダストのX線観測の重要性を一言付け加えておきたい。赤外域に見られるダストバンドは,PAHバンド(図1)に見られるようにダストの構造を理解する上で重要な手掛かりとなるが,図2,3で示唆されるように,なかなかユニークにダストの組成を追求することができない。これは,固体のバンドが,形や大きさや結晶性といった,さまざまな要因に依存してしまうことにも起因する。ダストの組成は,これまで宇宙空間に観測されるガスの量と,太陽組成の差から見積もられていた。しかし,この方法は,太陽組成がもともとの組成であるという一方的な仮定を前提としている。実は,X線のスペクトルをとると,ダストによる散乱光や,ガスとダストの両方からの吸収を分離して観測することで,ダスト中の元素量を直接見積もることのできる可能性がある。すでに,「ぎんが」衛星をはじめとしていくつかの観測がなされ,X線領域のダスト観測の重要性が高まっており,今後の発展が大きく期待される分野である。

(おなか・たかし)


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