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特集

紫外光観測器の感度アップ

 惑星大気や電離圏・磁気圏を人工衛星から紫外光で観測すると,主要成分の水素・ヘリウム・酸素の原子やイオンの分布が撮影できます。これを時系列に並べ動画にすると,各原子・イオンの運動の研究につながります。これまでに「あけぼの」衛星による地球のオーロラやハッブル宇宙望遠鏡による惑星画像などたくさんの写真が撮られ,惑星科学の研究が進展しています。さらに発光量が微弱でこれまで観測できなかった対象を撮影したり,より詳細に大気の運動を調べたりするためには,観測器の感度アップが必要となります。

 光の検出は,光子を電子に変換し,電気信号として処理することで行います。光子を電子に変換する割合(量子効率)は,光子が最初に当たる物質によって決まります。通常検出器に使われる材料の量子効率は,紫外光では数%にすぎません。そこで,量子効率の高い物質を検出器前に置き,電気信号として処理できる光子の割合を高める方法が考えられています。

 本研究では,ヨウ化セシウム(CsI)と臭化カリウム(KBr)という物質について,紫外光での量子効率増加率を調べました。結果は,波長100nm以下においてKBrが6〜8倍増加し,115nm以上ではCsIが10〜50倍も増加することが分かりました。さらに,量子効率増加率は,製作から衛星の打上げ,宇宙での観測までの間に経年変化をします。この変化についても調べ,CsIが50日後に3割減少,KBrが100日後に4割減少し,その後は変化しないことが分かりました。



図
図 量子効率の増加率の波長依存性
黒丸がヨウ化セシウム(CsI),灰丸が臭化カリウム(KBr)を表し,主要な原子・イオンの発光波長も示している。


(山崎 敦[東北大],三宅 亙[情報通信研究機構])
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