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特集

次の世代の地上局に向けて

 世の中の通信技術の進歩には目覚ましいものがあります。身近な通信技術の目的は,いかに情報を効率よく正確に伝送するかということです。小型で省エネ,そしてデザインのよさも,最近では重要な話題です。私たちが取り組む宇宙通信技術でも効率のよい伝送,省エネは大切ですが,それが特殊であるのは,どれほど遠方まで通信可能な領域を広げ得るかということも興味ある話題だからです。そのための技術を今,開発しています。しかも安価に。目立たない技術でも,そこに工夫があります。

 私たちが取り組んできたのは,新しい地上局にふさわしい地上系システムの開発です。金星や水星といった探査機には,新しい通信機器が採用されることが決まりました(『ISASニュース』2003年12月号No. 273参照)。さらに通信能力を高めるために,今度は地上の通信装置というわけです。私たちの深宇宙地上局である臼田宇宙空間観測所の64m径の大型アンテナは,竣工から20年を経過してその寿命が心配されています。

 図は,実験中の地上系装置のひな型です。見栄えはきれいではありません。でも,この骨組みだけに見える無骨な装置で試験を重ねて,晴れて将来の地上系を支える技術に昇華します。木星までの遠距離において,宇宙研の小型衛星で探査を行うためには,非常に微弱な信号から規則的な成分を同期,再生し,引き続き復調結果の誤りを取り除く精緻な作業が必要になります。この装置は実験装置らしく,新しい技術が後から後から盛り込めるように工夫されています。現在は,再生方式型の深宇宙測距方式,誤り訂正符号として深宇宙用のターボ符号(携帯電話でもおなじみですね)が準備されています。研究所の学生の力が手伝って,お披露目は,もうすぐそこです。



図
図 実験中の地上系装置


(戸田知朗[通信班/ISAS/JAXA])
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