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特集

宇宙技術が生んだ高信頼民生用半導体メモリの開発

 宇宙用半導体メモリにおいては,宇宙放射線によるソフトエラー(放射線によるビット反転エラー)が深刻な問題であることが知られていました。一方,微細化の進む民生用半導体メモリにおいても,近年,部品内部の不純物材料から発生する放射線問題に加えて,地上に降り注ぐ中性子線の問題が顕在化しています。そのため航空機だけでなくハイエンドサーバーなどIT基盤技術におけるソフトエラーの問題が強く危惧されています。

 このたび宇宙研は,三菱重工業(株)および沖電気工業(株)と共同で,独自の耐放射線強化シミュレーション技術と最先端の民生SOI(Silicon On Insulator)製造技術を用いて,高信頼民生用半導体メモリを開発しました(図)。また開発したメモリに対して,フランス原子力エネルギー研究機関の研究者と共同で,米国ロスアラモス研究所において中性子照射試験をしました。その結果,宇宙から降り注ぐ中性子線によるソフトエラー確率が,今までに発表されている民生用半導体メモリのものに比べて2桁近く小さいことを確認しました。これは,宇宙科学の研究で生まれた先端技術が,高信頼性が要求される民生産業機器用半導体メモリの深刻なソフトエラー問題を一気に解決したことを意味するものです。



図
図 高信頼民生用半導体メモリ


(廣瀬和之,齋藤宏文,福田盛介[ISAS/JAXA])
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