宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > 特集 > 第5回宇宙科学シンポジウム > 宇宙科学を支えるテクノロジー > 先進型熱制御デバイス ループヒートパイプ

特集

先進型熱制御デバイス ループヒートパイプ

 人工衛星などの宇宙機は,高機能な観測/制御機器が数多く搭載されています。そのため,各機器からの発熱によって,宇宙機の温度はどんどん上昇してしまいます。しかし,宇宙には空気がないため,ファンの送風による温度制御の方法は使えません。そのため宇宙機では,外部にある放熱面まで熱を運び出す仕組みが採用されます。そこで熱の運び屋として登場するのが,「ヒートパイプ(Heat Pipe,以下HP)」と呼ばれる熱制御デバイスです。今やノートパソコンなどでは当たり前に使われるようになったHPですが,実は航空宇宙の分野で発展してきました。そして,どんな最先端の科学衛星も今やHPなしではうまく機能しません,と言っては言い過ぎかもしれませんが,逆に,高性能のHPを開発すれば,“観測装置の性能を最大限に引き出す”ことができるといえます。

 我々は,そんな次世代のHPとして,HPの概念を拡張した「ループヒートパイプ(Loop Heat Pipe,以下LHP)」と呼ばれる先進型熱制御デバイスの研究を行っています(図)。



図
図 ループヒートパイプの概略図と特徴


 さまざまな利点を持つことから,米国ではこのLHPが主流になりつつあります。例えば,ハッブル宇宙望遠鏡,地球科学衛星Aura,そして宇宙科学衛星SwiftにもLHPが搭載されています。一方,日本では,LHPはまだ技術実証の段階(USERS/CPDR,ETS-VIII/FLHP)でしかありません。しかし,国際宇宙ステーション「きぼう」曝露部搭載予定の日本の実験装置である全天X線監視装置(MAXI,2008年予定)には,海外製ではありますがLHPが日本の宇宙機では初めて使用されることとなっており,非常に注目されています。

 我々は,このLHPのさらなる機能性向上を狙って,高信頼性化,軽量化を目指しています。


(永井大樹[東北大],上野史郎,小川博之[ISAS/JAXA])
宇宙科学を支えるテクノロジーインデックスページへ