宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > 特集 > 第5回宇宙科学シンポジウム > 宇宙科学を支えるテクノロジー > 形状記憶ポリマの研究開発

特集

形状記憶ポリマの研究開発

 ロケットによる打上げ能力に限界がある中で,宇宙ステーション,人工衛星などの宇宙構造物は,その機能の多様化に伴いますます大型化する傾向にあります。宇宙構造物の大型化を実現し,さらにロケットへの搭載性を改善する手段として,展開構造技術が注目されています。

 形状記憶ポリマは,ガラス転移温度(Tg)を境に弾性率が大きく変化します。そのため,図に示すように,材料の温度をコントロールすることにより,形状変化,形状固定,さらに形状を原形へ回復させることができます。形状記憶ポリマを利用すれば,小型・軽量かつ単純で高信頼性の展開構造が実現できると考えられます。



図
図 形状記憶ポリマの概念図


 JAXAでは,宇宙用展開構造への適用を目的として,形状記憶ポリマの研究開発を実施しています。これまでに,ガラス転移温度の向上(約100℃)に成功し,軌道上においても安定した形状変化を得ることが可能となりました。また,宇宙環境を模擬した電子線,紫外線および原子状酸素照射試験後においても,機械的特性や形状記憶特性に大きな変化がなく,宇宙環境への耐性が高いことを確認しました。今後は簡易モデルを製作し,それを利用した動作確認試験や,収納限界測定などを行います。そして,これら試験結果が良好であれば,人工衛星に搭載し,宇宙実証試験を実施する予定です。


(島村宏之,石澤淳一郎[マテリアル・機構技術グループ/ISTA/JAXA])
宇宙科学を支えるテクノロジーインデックスページへ